10月の中小型!今月のキーワードは…高確度のEPS拡大株

 米国の証券会社がS&P500種指数の年末目標を大幅に下方修正したり、日本の証券会社もTOPIX(東証株価指数)の年末目標を下方修正したり…世界的な景気後退が浮き彫りになる中、悲観ムードを広げて始まった10月相場。

 目標株価の引き下げは、(1)さらなる金利上昇を想定した前提とするPER(株価収益率)水準の引き下げ、(2)景気後退シナリオを反映したEPS(1株当たり利益)の引き下げ、この二つを理由としたものばかり。「金利上昇」と「景気減速」…みんなが警戒してきたこの2大リスクが、最後まで株価の重しになるとの見方が主流となっています。

 ただ、そんな悲観ムードはどこへ行った?かのごとく、10月に入った途端、株式市場が強く切り返し始めました。人間の弱点は、記憶が薄れること…あれだけ警戒していても、株価が上がり始めると「もう大丈夫かも?」方向に気持ちが揺れます。

 10月が意外高で始まったことを受け、また2大リスクへの警戒が薄れてきた雰囲気。株価の下落で警戒強める、リバウンドで気が緩む、再び安値割れで警戒強める、リバウンドで気が緩む…これ、今回で今年何度目でしょう。

 証券会社の目標株価引き下げ理由である、「(1)さらなる金利上昇を想定した前提とするPER水準の引き下げ」、「(2)景気後退シナリオを反映したEPSの引き下げ」のうち、現時点でいえるのは「(1)」は織り込んだ可能性があるということ。

 今年のグロース株の下落理由は、金利上昇の加速によるバリュエーション調整でした。ですが、ここから控えるFOMCは11月、12月の2回。

 この2回で合計1.25%の利上げがコンセンサスですので、年末のFRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利水準は4.25~4.50%。となると、米2年債利回りで9月下旬に4.3%台まで見たということは、年末までの利上げに関する債券市場の織り込みはほぼ完了したといえるわけです。

 ここからの短い金利のアップサイドは限られるため、「(1)」の金利上昇によるPER水準の引き下げによる調整余地も限られる、と解釈できます。

 ただし、「(2)」に関してはまだ不透明。コストインフレ、サプライチェーンの混乱長期化、消費減退の影響がどの程度、企業の来期以降の業績見通しを切り下げ、EPSの低下要因になるのか? 市場が織り込めていないのは、「(2)」だけと考えられます。

 この仮説でいえば、日本の中小型株でも、中小型グロース株が花開く時期が来るのではないか?という想像が膨らみます。

 高PER株の多いグロース株はバリュエーション調整に激弱で、これだけで株価が半値以下になるケースも今年多く見られましたよね。これは、米金利がどこまで上がるか?が見えなかったから。それでいえば、年末までの上限も見え、かつ、上限近辺に2年債利回りが到達した際のナスダックの安値水準も確認できた意味は大きいといえます。

 企業によって成長速度やビジネスモデルに違いがあるため、予想PERで何倍だと高いといった比較はできません。

 また、中小型株の場合は、その株の持つ人気度(=流動性)が重要で、流動性が高いことで高いプレミアムが付きます。そうなると、現状で市場が不透明感を抱える「(2)」のEPSの低下度合いに注意を払い、EPSの拡大が見込めるグロース株を選択するのが最善策という答えにたどり着きます。

 今回は、東証グロース、スタンダード市場に上場する銘柄から、今期の利益の伸び率が高く、かつ来期コンセンサスも増収増益が見通せる好業績銘柄をピックアップしました。

EPS低下を気にしなくてOK!?中小型グロースの王道上位10
スクリーニング条件(1)今期予想売上高、純利益が10%以上の伸び率、(2)アナリストによる業績予想アリ
(3)来期のQC(アナリスト予想平均)売上高、純利益が10%以上の伸び率 ※時価総額大きい順に列挙

市場 コード 銘柄名 時価総額
(億円)
今期予想
増収率
今期予想
最終増益率
来期QC
増収率
来期QC
最終増益率
グロース 4194 ビジョナル 3,989 27% 42% 21% 24%
グロース 5032 ANYCOLOR 3,803 34% 36% 27% 24%
スタンダード 7071 アンビス 2,376 47% 51% 36% 28%
グロース 9552 M&A総合 1,025 167% 220% 50% 39%
グロース 4071 プラスアルファ 961 25% 12% 31% 36%
スタンダード 4293 セプテーニHD 952 40% 86% 18% 23%
グロース 4480 メドレー 924 28% 16% 24% 51%
グロース 7685 BUYSELL 911 37% 48% 31% 33%
グロース 4880 セルソース 837 39% 28% 21% 24%
グロース 9229 サンウェルズ 811 54% 157% 46% 59%
※10月4日終値時点

 まず、今期予想売上高、純利益の伸び率が10%以上の銘柄を残しています。市場が警戒する「(2)」は来期の利益減少(EPS低下)ですので、来期はどうなのか? これはアナリスト予想の平均値(=コンセンサス)と比較。来期もアナリスト予想売上高、純利益の伸び率が10%以上の銘柄を残し、時価総額の大きい順に並べています。

 中小型株でも時価総額の大きい順に並べたのは、来期のEPS低下を気にしながら、ポートフォリオを構築するのは機関投資家(グロース株を触る海外投資家含め)がメインと見られるため。

 個人投資家はサイズ感など気にしませんが、機関投資家にとっては時価総額や売買代金などのサイズ感は重要。彼らの資金流入も期待しつつ、景気後退によるEPS低下懸念も「関係なくね?」な銘柄といえます。