ここからの視点

 以上、長々と後講釈的な解説をしたのは、読者ご自身に相場ウオッチングの目を持っていただきたいと願ってのことです。来る10~12月は、株式相場に対するファンダメンタルズから圧力を評価する正念場と見ています。図2で描くように、米株式相場は現在「逆金融相場」の渦中にあります。向こう3~6カ月はインフレの高止まり、金利の高止まり、それによる景気悪化の具合をデータに一喜一憂しながら、逆金融相場の深度、その先の逆業績相場のありさまを思い描いて神経質になる場面になるでしょう。

 高インフレが鎮まらず、利上げが現在の予想以上になるなら、スタグフレーションによる株価の圧迫もひどくなると見られます。ほどほどのインフレと景気減速観から、利上げに打ち止め感が出れば、中長期金利低下で株価に短期的持ち直しの可能性も出そうですが、何にしてもデータ次第のキナ臭さです。

 行動学的には、コストと時間の面で近場のポジションが限られ、売り手が少なくなるように見えます。しかし、既に2022年初来の底値水準にあることが留意されます。これ以上の下落が、過去のより遠い時間に作られたポジションの調整を誘い出すと、相場の土台自体がひび割れるような影響度になりかねません。

 決して怖がらせるための話をしている訳ではありません。来る正念場に際して、少なくとも筆者は、今回解説したロジックに基づいて、場面場面の相場診断をしていきます。方法論を共有して臨みたいという方に、当レポートが理解の一助となれば幸いです。

図2: 米株式相場サイクルの展開イメージ

出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

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