米国株は「大統領選挙の前年」に上がりやすい

 ただ、紆余曲折はあってもインフレは徐々に和らいでいくと想定しています。政策金利の軌道を巡るめどが立ってくれば、長期金利は年末から来年にかけて安定もしくは低下傾向をたどっていく可能性はあります。

 一方、11月8日に実施される中間選挙を経て、米国議会の選挙動向は(民主党と共和党の間で)接戦が予想されており、次回の大統領選挙を2024年に控え、与党・民主党は「インフレ抑制」から「景気浮揚」に経済政策の軸足を移していく可能性もあります。

 実は、米国の選挙サイクル(4年)の中で、「大統領選挙前年(中間選挙翌年)の米国株式は堅調傾向」とのアノマリー(相場の季節性や傾向)が指摘されています。

 図表3は、過去10回にわたる大統領選挙前年のダウ工業株30種平均(NYダウ)の推移を平均化して示したものです(年初=100)。大統領選挙前年はNYダウが堅調傾向をたどり年間平均で約16%上昇したことがわかります。大統領選挙を翌年に控え、(当時の)現職大統領が平均的に景気下支えや景気刺激策を積極化したことが、株式市場を堅調に導いたとの説が有力です。

 これまでの金融引き締めで、2023年は景気後退入りの可能性が指摘されていますが、インフレの落ち着きに応じた長期金利の安定に加え、ホワイトハウス(大統領府)が主導する財政出動を好感し、2023年は米国株高が再現される可能性に注目したいと思います。

 米国の作家マーク・トウェインは、「歴史は繰り返さないが、韻(いん)を踏む」(History doesn’t repeat itself, but it often rhymes.)との名言を残しました。「歴史でまったく同じことが繰り返されることはないが、似たような出来事はしばしば起きる」との意味です。

「来年の米国株は回復傾向をたどる」とのシナリオを想定するなら、本年内の株価下落局面における投資戦略としては「押し目買い」や「積み増し買い」がふさわしいと考えられます。

<図表3>「大統領選挙前年は株高傾向」は来年も繰り返されるか

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成

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