機関投資家の「フォーミュラ・プラン」のリバランスは?

 機関投資家の運用手法の中にはリバランスの効果を強調するものがある。

 例えば、はじめに投資銘柄の全てを同じウェイトでポートフォリオに組み込んで一定の期間ごとに等金額にリバランスし直すことを繰り返す「等金額リバランス」と呼ばれる方法が投資信託などで使われたことがある。

 これは「(相対的に)下がった株は、(相対的に)上がりやすい傾向がある」というリターン・リバーサルの効果に期待した運用戦略だ。等金額にリバランスするよりも下がった銘柄のウェイト付けを大きくして行くもっと極端にリターン・リバーサル効果を狙った運用手法もある。

 当てはめる期間によっては、リターン・リバーサル効果が強く働いてこの種の戦略が奏功する場合はある。

 また、全銘柄を等金額で組み入れると、時価総額の大きな株式のパフォーマンスが悪い場合に、小型株をオーバーウェイトしていたことが有利に働いてTOPIXに勝つような場合もある。

 但し、現実の運用では売買回転率が意外に大きくなって、取引コストの負担が重くなってなかなか上手く行かないことが多い。また、この種の戦略でも、運用のスタート時の情報と判断で決めた戦略を時間が経っても使い続けることの論理的な難点から逃れてはいない。

 同様のことは、多くのスマートベータ戦略にも言える。

ポートフォリオの「いい株、悪い株、普通の株」

 かなり昔のことだが、テレビの番組の中で「いい子、悪い子、普通の子」というコンセプト(の多分ギャグ)があったことを思い出すが、株式のアクティブ・ファンドを運用している場合に、自分のポートフォリオの保有銘柄を子細に眺めると、「いい株、悪い株、普通の株」があることに気づく。

 筆者がこのことに意識的に気づいたきっかけは、ファンドマネージャーとしての自分が運用するポートフォリオの銘柄を一つ一つ検討した時ではなく、過去10年分くらいのデータに基づいて一定間隔(多くは毎月)ポートフォリオの最適化計算を連続的に行って結果を調べた時だった。

 一定の基準を決めてそれぞれの時点の個々の銘柄に期待アクティブ・リターンを与えて「その時だったらこれが最適」というポートフォリオを計算するのだが、売買コストを考慮して(当然考慮すべきなのだが)リバランスを行うと、架空の運用がスタートしてから時間が経つにつれてポートフォリオ全体のアクティブ・リターンが下がってくる傾向が観察された。

 この現象は、運用している本人は気づきにくいかも知れないが、計算上のポートフォリオにだけ起こるのではなく、リアルなポートフォリオにも起こっているはずだ。

 原因は以下のような事情による。

 先ず、スタート時は何の制約もなく理想的なポートフォリオを作ることが出来る。その後も売買コストがゼロなら、毎回制約なしにポートフォリオを作ることが出来るのだが、現実はそうではない。

 売買コストの言わば「塀」があると、ある銘柄がポートフォリオの中から塀の外に出て行くにはコストを払ってでも売るべき「悪い株」にならないといけないし、外の銘柄が中に入るためにはコストの塀の高さを越えられるだけ相対的に魅力的にならなければいけない。

 ポートフォリオを最初に作った時は「いい株」の比率が大きいポートフォリオを作ることが出来るのだが、その後の状況の変化で、「いい株」は既に魅力を失った「普通の株」になり、ついには「悪い株」と評価されるようになってからやっとポートフォリオの外に出て行く。

 こう書くと「普通の株」が役立たずのように思えるかも知れないが、特別な魅力はなくとも分散投資の一翼を担ってリスクの低減に役に立ちつつ株式の平均的なリスク・プレミアムを稼いでくれることが期待されるのだから、それなりの役割を果たしている。

 こうした事情を考えると、ポートフォリオの運用戦略を作るには、期待アクティブ・リターンに影響を与える「情報の変化速度」や「売買のコスト」についてかなり周到に考えなければならないことが分かる。