10月の株主優待銘柄

 10月の優待株は10月27日(木)が権利付き最終日、翌10月28日(金)が権利落ち日。土日を挟んだ10月31日(月)が権利確定日になります。

 10月27日(木)までに優待株を買って、翌28日(金)まで保有し続けると、土日をまたいだ10月31日(月)の株主名簿に名前が記載され、株主優待の権利を取得できます。

 10月優待は全部で29銘柄※と少数精鋭です。

 旅行割引券やJCBギフトカード、クオカードといった金券優待が目立ちます。

※楽天証券 株主優待検索より

 また、バラエティに富んだ優待株も集まっています。

 機械・化学品事業の巴工業はワイン(10月末に100株以上保有で一律、1本)、名古屋証券取引所ネクスト市場上場でフラワービジネスを展開するアートグリーンは胡蝶蘭(10月末に100株以上保有で一律、4,500円相当のミディ胡蝶蘭1鉢)、いちごオフィスリート投資法人はサッカーJリーグの観戦チケット優待などを用意しています。

 食費節約に役立つ外食券優待には、

  • 総菜販売「RF1」を手掛けるロック・フィールドのそうざい券(10月末は100株以上で1,000円分、4月末は200株で1,000円分)
  • 横浜家系ラーメン店を展開するギフトホールディングスの食事優待電子チケット(10月・4月末に100株で2枚。1枚で券売機のメニューなどからどれでも一つ無料。今回の10月末より1年以上継続保有の優遇制度も導入)
  • 「椿屋珈琲」や自社ダイニング店舗などで使える東和フードサービスの食事券(10月末は100株で1,000円分、4月末は1,500円分)
  • パック米や切り餅メーカー・サトウ食品の鏡餅など自社グループ商品(10月末は100株で1,000円相当)

などがあります。

 そんな10月優待株の人気No.1は、旅行代理店のエイチ・アイ・エス。10月・4月末、100株保有で2,000円分の旅行割引券、長崎のハウステンボス、愛知のラグーナテンボスの入場割引券500円分が贈呈されます。旅行割引券は同社の旅行商品1万2,000円以上で1枚(1,000円分)を上限に利用できます。

 同社は長引くコロナ禍の影響で2022年4月中間期決算が3年連続の赤字で、赤字幅は過去最悪となりました。ただ、主力の旅行事業の売上高が前年比2倍となるなど、旅行需要の持ち直しを背景に売上は回復中です。

 株価はコロナの猛威もあって低迷が続いていますが、7月末以降は2,000円台を回復しています。

 財務健全化のためハウステンボス事業を900億円で香港の投資会社に売却するという報道も流れており、優待のハウステンボス入場割引券も廃止される可能性があります。

 第2位は「業務スーパー」の神戸物産。同社の優待は買物券ではなく、JCBギフトカードです。10月末は100株保有で1,000円分がもらえます。継続保有年数が3年以上の場合は3,000円分に増額となります。

 同社は今期2022年10月期も最高益更新が見込まれるなど業績絶好調。株価も右肩上がりで推移しているため、3年超の長期保有を目指せば優待増額だけでなく、株価の値上がり益に期待できるかもしれません。

 第3位は三井物産などがスポンサーの総合型J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)の投資法人みらい。10月・4月末に1口以上保有していると一律に、ホテル宿泊割引券を利用できます。

 対象ホテルは全国各地の「グリーンズホテルズ」(会員専用の固定料金で宿泊可能)、「チョイスホテルズ」(ホテルごとのプレミアム料金)、「ホテルウィングインターナショナル」(公式サイトの10%割引)です。

 第4位は暗号通貨のソリューションカンパニーに変貌したクシム。半年以上の継続保有が条件ですが、10月末に100株保有でクオカード500円分が贈られます。同社は前期まで赤字続きでしたが、今年7月に主力だったeラーニング事業を売却。暗号通貨「コスプレトークン」を発行するなどブロックチェーン関連会社として、2022年10月期は大幅黒字転換が見込まれています。

 第5位には、この10月末から株主優待制度を新設する新顔が入りました。それが、ヘアサロン「Agu.」などを展開する美容室経営のAB&Company。

 100株保有の場合、同社オンラインストアで使用可能な優待券8,000円分が贈呈されます。ストアでは同社オリジナルのシャンプーやヘアケア製品を購入できます。

 100株の投資金額は9.7万円前後のため、8,000円分の優待券はかなり費用対効果がいい魅力的な優待といえるでしょう。

 第6位は建築、農業用のシートメーカー・萩原工業。10月末に100株保有で、1,000円相当の同社商品の和みシート(2畳分のレジャーシート)や岡山県特産のマスキングテープ、クオカード、大原美術館オンラインツアーから1点選べます。3年以上の継続保有では2,000円相当の岡山県特産品や自社製品などにグレードアップします。

 第7位はナッツ類やチョコレートを販売する食品メーカーの正栄食品工業です。10月・4月末に100株以上保有で一律に、チョコやナッツ類の自社商品詰め合わせが贈呈されます。盛りだくさんな内容でファンの多い優待です。

 10月優待で人気の人材派遣会社ギグワークスはこのほど、2022年10月末の対象株主から優待内容を変更すると発表しました。100株以上保有の株主を対象に、連結子会社化した通信販売事業の日本直販で1年間利用できる30%割引クーポンが贈られます。

コロナ第7波と物価高で勝ち組・負け組が鮮明に

 優待株の花形セクターといえば外食産業ですが、2022年に入ってインフレ(原材料高)による業績悪化の兆しが出ています。

 ファミレスの「ガスト」「ジョナサン」などを運営する人気優待株すかいらーくホールディングスは2022年12月期の業績を大幅下方修正。2023年以降、不採算店など100店の閉店を決め、株価も大きく下落しました。

 業績不振の原因になったのは、コロナ禍による外食需要の停滞だけではありません。

 ここ最近の物価高も、業績の足を引っ張る新たな要因になりつつあります。

 物価高は、食材価格の高騰による利益圧迫、そして生活費の値上がりで家計が厳しくなった消費者の外食控えというダブルの悪影響を外食産業におよぼしそうです。

 コロナ禍で大打撃を受けた外食産業にとって物価高は一難去ってまた一難といえます。

 一方、「丸亀製麺」のトリドールホールディングスは、2022年4-6月期の営業利益が47億円となり、2023年3月期の通期予想40億円を上回りました。1年間でこれぐらい利益が出るという予想以上の利益をたった3カ月で達成したわけですから、株価も急騰。

 外食制限の解除で、イートインが大きく回復したことに加え、コロナ禍で成長したテイクアウト部門も堅調に推移したことが、予想をはるかに超える好業績の原動力になりました。

 このように、同じ外食産業でも業績回復が続く企業、反対に業績が大きく落ち込んでしまう企業が出てきています。

 外食産業の場合、個人投資家はいわばお客さま。自分が行きたいと思う外食店舗は他の顧客にとっても行きたい店舗のはずなので、「業績がよくなるのでは…」と想像を働かすことができます。

 同じ株主優待株でも「コロナ禍以降も行きたいお店」「物価高で家計も苦しくなったし、あまり行きたいとは思わないお店」という基準で、銘柄をより慎重に選別する必要があるかもしれません。