実はかなり重要?信用取引のコスト(諸経費)について

 続いて、信用取引にかかるコスト(諸経費)について見ていきます。

 多くの信用取引を解説する書籍やコンテンツでは、一般的に諸経費の説明は最後の方になることが多いのですが、信用取引を行う実際の場面では、建玉の管理と同時に強く意識する必要があるのがこのコストですので、実は早い段階で理解しておいた方が良かったりします。

 下の図は米国株信用取引におけるコストの一覧表です。

図:米国株信用取引にかかるコスト

 上の図を見ると、何か複雑そうで、「これから信用取引を始めてみよう」と考えている方の中には、その意欲がそがれてしまいそうな印象ですが、とりあえずは発生時期の項目に注目すると整理しやすくなります。具体的には、「新規建時/返済時」と「保有期間(受渡日ベース)」に分かれています。

 まず、前者(新規建時/返済時)に該当するのは、「取引手数料」と「Sec Fee(米国現地証券取引所手数料)」の二つになります。

 これらは株式取引そのものにかかるコストですので、現物取引・信用取引に関係なく発生します。なお、Sec Feeとは、米国の証券取引委員会(Sec)に支払われる現地の取引費用のことで、現物売り・新規売り建て・売り返済など、「売り」の取引時に徴収されます。

 2022年7月27日現在は、「約定代金(米ドル)×0.0000229米ドル」で計算されます(米セント未満は切り上げ)。

 そして、もう一方の後者(保有期間)に該当するのが、「金利」と「貸株料」で、こちらが信用取引ならではのコストになります。

 金利は買い建てを行うときに発生します。買い建ては資金を借りて株式を買うことは先ほども説明した通りですが、借りた資金に対して支払う利息のようなイメージです。実際の金利は、基準金利に3.5%を上乗せした利率(年率)となり、金利額の計算式は以下の通りです。

買い建玉の金額(米ドル)×金利(年率)÷365日×建玉保有の日数

 2022年8月18日時点の金利は4.5%ですが、例えば、1万米ドルの買い建玉を3日保有した場合の金利の額を上の式に当てはめて計算すると、約3.70米ドルとなります。

 さらに、金利の計算にはもう一つの重要な点があり、それは「建玉保有の日数」になります。正確に説明すると、「建国内受渡日から返済国内受渡日までの両端入れの日数」となります。

 イマイチよく分からない表現ですが、まずは、金利の計算が行われるのが、取引が成立した「約定日」ではなく、「受渡日」ベースであることを押さえてください。米国株取引の受渡日は「T+2(約定日から起算して3営業日目)」ですが、楽天証券での約定日は米国市場の約定日の翌国内営業日としています。

 例えば、米国株信用取引を月曜日に新規建てをして、翌火曜日に返済した場合の約定日と受渡日は以下のようになります。

図:受渡日のイメージ

 実際の取引は米国時間の月曜日に新規建てを行い、翌火曜日に返済を行っていますが、楽天証券では、新規建ては火曜日、返済は水曜日を約定日(国内約定日)とするため、受渡日はそれぞれ木曜日と金曜日になります。したがって、金利は木曜日から金曜日までの2日間で計算されることになります。

 勘の鋭い方ならお気付きかもしれませんが、仮に返済をした日が火曜日でなく、水曜日だった場合には返済の受渡日が翌週の月曜日になるため、金利の計算は、木曜日から翌月曜日の5日間ということになります。金利の日数は土日や祝日も含めて計算されるため、連休などが絡むタイミングで取引を行う際には注意が必要です。

 また、両端入れというのは「受渡日を含める」という意味です。つまり、新規建てをしたその日に返済を行った場合でも、1日分の金利が発生することになります。1日に何度も回転売買を繰り返した場合、その度に1日分の金利が発生します。

 こうした、約定日と受渡日、計算方法については、「貸株料」についても同様の考え方で行われます。貸株料とは売り建てをする際に株を借りることで発生する費用になります。

 このほか、「付加貸株料」や「事務管理費」、「権利処理手数料」なども信用建玉を保有することで発生するコストになりますが、楽天証券では当面の間は無料です。

 ここまで書いてしまうと、「ちょっと面倒だな」とか、「費用負担が意外と重たくなるのかな」と不安になってしまうところですが、実際のところ、長期で建玉を保有したり、建玉の金額を無理して大きくしない限り、これらのコストが重たくなってしまうケースはそう多くはありません。

 ただ、「思っていたよりも利益が出なかった」ということがないように、コストに対する意識と仕組みはしっかりと頭の中に入れておいた方が良いと言えます。

 次回は、信用建玉の管理に必要な考え方を、最低委託保証金や委託保証金率の説明と共に考えていきたいと思います。