3 大和工業(5444・東証プライム)

 電炉メーカーの大手で、約7割がビルや工場の建設に用いられるH形鋼となります。電炉メーカーの中でもいち早く海外に進出しており、経常利益の9割超が海外事業で占められています。自己資本比率は84%で無借金経営、財務安定性は高い状況です。

 米国やアジア、中東などで合弁展開を行っており、とりわけ、米ニューコアとの合弁会社ニューコア・ヤマト・スチールの持分法利益が高水準となっています。連結配当性向は30%を目安としています。

 2022年3月期経常利益は576億円で前期比2.7倍となっています。中国の輸出抑制策・粗鋼減産などによる鋼材需給の引き締まり、鉄スクラップ価格の上昇などで、販売単価が強含みで推移したほか、米国を中心とした持分法投資損益の大幅な拡大も寄与しました。年間配当金は前期比倍増の160円となりました。

 一方、2023年3月期は790億円で同37.0%増と連続大幅増益の見通しです。国内鉄鋼事業における販売数量増加、販売価格是正などを見込んでいるほか、旺盛な需要の継続で米国持分法投資損益の一段の拡大も期待されるようです。年間配当金も前期比40円増の200円を計画しています。

 連結配当性向30%を目安にしていることで、業績が計画線であっても増配余地は大きいとみられます。また、キャッシュポジションが豊富なため、自社株買いなども機動的に行われていくものと考えられます。

 基本的に、米国景気との連動性が高くなりやすいと考えられますが、日本製鉄(5401)JFEHD(5411)など高炉メーカーとの比較で業績安定感が強いことから、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などのバリュエーション面でも割安な印象があります。

4 シノケングループ(8909・東証スタンダード)

 アパートやマンションなどの不動産販売、賃貸・マンション管理、不動産ファンドなどの不動産サービス事業が主力となります。不動産販売は独自のビジネスモデルで、99%が会社員や公務員となっています。

 また、不動産管理戸数は4万2,000戸以上で、九州・沖縄エリアではトップの実績です。ほか、ゼネコン事業はLPガス販売、介護施設運営なども手掛けています。海外にも2006年より進出し、現在は3カ国に拠点があります。

 2022年12月期第1四半期営業利益は22億円で前年同期比19.3%増益となっています。アパート、マンションともに順調な引き渡しが進んだほか、賃貸管理戸数の増加など、不動産セールスや不動産サービス事業が順調に拡大しました。

 2022年12月期通期では98億円、前期比9.5%増益を予想、期初計画を据え置いています。年間配当金は前期比3円増配となる44円を計画しています。

 配当性向30%を目指すとしていることもあり、業績が計画線で推移すれば、今後の増配余地もあると考えられます。

 マンション販売におけるB2B向け強化など販売チャネルの拡大、ストックビジネス取扱件数増加によるライフケア事業とのシナジー創出、海外展開など、今後の成長余地も大きいと判断されます。また、いったん延期としたシノケンリート投資法人の上場なども今後の期待材料となるでしょう。

5 INPEX(1605・東証プライム)

 石油や天然ガスの探鉱・開発・生産という上流事業が中核になります。国内上場企業の中では最も、原油価格の動向による影響が大きい銘柄といえます。2006年4月に、国際石油開発と帝国石油が統合して現体制となり、2021年4月より現社名に変更しています。

 イクシスLNGをはじめ、世界約20カ国でプロジェクトを推進しています。原油換算の生産量は日量58.4万バレル、確認埋蔵量は63.1億バレル(ともに2021年12月期)のもようです。

 2022年12月期第1四半期営業利益は2,283億円で前年同期比2.2倍の水準となっています。つれて、通期予想は従来計画の7,160億円から9,240億円、前期比56.4%増に上方修正しています。原油・ガス生産操業がおおむね順調に進捗している中での、原油価格の上振れ、ならびに、為替の円安が上振れ要因としています。

 修正後の原油相場見通し、為替レートは依然として保守的であり、さらなる業績の上振れ余地も大きいとみられます。なお、現段階では、年間配当金は前期比6円増の54円を計画しています。

 株価は原油価格の動向にほぼ連動します。原油価格は5月でピークをつけた可能性も高く、今後の株価の大幅な上昇期待までは持ちにくいでしょう。ただ、ロシアのウクライナ侵攻が続いており、短期的に原油価格が大幅に調整する懸念も限定的とみられます。現状の配当利回り水準であれば、十分にインカムゲイン目的での投資対象となり得るでしょう。

 ちなみに、会社側では中計期間中の総還元性向40%以上をメドとしており、先の上方修正時に据え置かれていた2022年の配当計画は、今後大幅に引き上げられる可能性は高いと考えられます。