継続した好業績は低い配当性向水準を引き上げるきっかけに

 株式市場は米国のインフレ指標に一喜一憂の展開が続いています。インフレピークアウトのタイミングは近づいてきているとみられますが、ロシアのウクライナ侵攻継続などは一段のインフレ高進を招く可能性も残ります。

 目先は不安定な相場状況が継続する公算も大きい中、今週からは国内でも4-6月期の決算発表が本格化するため、徐々に個別の業績動向に関心が向かうものと考えられます。

 好業績銘柄への注目度を高めるタイミングといえるでしょう。とはいえ、好業績期待銘柄は決算発表が好材料出尽くしと受けとめられるケースもままあります。ただ、同時に増配のアナウンスなどがあれば、一段の高評価につながる可能性が高いと判断されます。

 今回は、配当性向の水準が相対的に低い銘柄を増配期待銘柄として注目します。継続する好決算が配当性向の見直しにつながるものと期待します。

 今回取り上げた銘柄は、現在でも配当利回りが高水準である一方、配当性向が国内企業の平均とされる30%を大きく割り込んでいるものとしています。前期の増益決算に続いて、今期も大幅増益を見込んでいるような銘柄も多く、配当性向の水準を引き上げるべきタイミングであるといえるでしょう。

 具体的には、配当利回りが4.0%以上の高水準であり、配当性向が25%以下、前期の営業増益に続いて今期も5%以上の営業増益が計画されている銘柄としています。

増配も期待できる好業績の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 7月15日終値 時価総額 今期営業増益率 配当性向
1518 三井松島HD 5.54 2,889.0 377 69.9 21.9
7879 ノダ 4.67 1,285.0 223 137.7 17.4
5444 大和工業 4.66 4,290.0 5,789 5.3 22.7
8909 シノケングループ 4.24 1,037.0 377 9.5 23.5
1605 INPEX 4.01 1,346.0 18,865 56.4 25.0
注:配当利回り、今期営業増益率、配当性向の単位は%、時価総額の単位は億円
注:平均成長率は営業利益(今期予想含む)
注:配当利回りは会社計画がベース

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが4.0%以上(7月15日終値)
  2. 前期営業増益かつ、今期予想営業増益率が5%以上
  3. 時価総額が200億円以上
  4. 予想配当性向が25%以下

1 三井松島HD(1518・東証プライム)

 エネルギー事業と生活関連事業を展開しています。エネルギー事業では、豪州リデル炭鉱の操業を合弁で行っており、出資比率32.5%に応じた炭鉱権益を売上計上しています。また、太陽光発電所の運営も行っています。

 石炭生産依存の脱却を図るため、積極的に新規事業のM&A(買収や合併)を推進しており、生活関連事業は基本的にM&Aによって買収した企業群が手掛けています。ストローなど飲食用資材、衣料品、電子部品、事務機器、ペットフードなどが中心となっています。

 2022年3月期営業利益は84.2億円、前期比4.3倍となっています。石炭価格の上昇によってエネルギー事業の収益が大幅に拡大しました。また、生活関連事業も、電子部品分野が好調であったほか、住宅関連部材分野の新規M&A効果によって伸長しました。

 また、2023年3月期は143億円で同69.9%増と大幅増益の見通しです。石炭価格の上昇が続いており、引き続き全体収益拡大のけん引役になります。また、生活関連事業も日本カタンの新規連結効果が見込まれます。創業110周年記念配当80円を実施することで、年間配当金は前期比80円増の160円が計画されています。

 高水準の記念配当を実施しても、配当性向は21.9%の低水準にとどまります。会社側では、今後も普通配当は80円を下回らないことを目指すとしているほか、中期的に配当性向目標は30%を目安とするとしています。

 石炭価格のピークアウトが想定される中で、来期以降は収益水準が低下する見通しであるほか、記念配当も一巡する可能性がありますが、配当性向引き上げなどにより、配当水準の大幅な切り下がりは避けられるとみられます。さらに今期に関しては、石炭価格の高水準長期化による業績上振れも見込まれるため、一段の増配余地が生じる期待も持てます。

2 ノダ(7879・東証スタンダード)

 木質系の住宅建材メーカーです。床材から内壁材、内装建材、外装下地材などを製造販売する住宅建材事業と、合板製品を輸入販売する合板事業が二本柱です。再生資源、未利用資源である廃木材のチップを繊維化・加熱・圧縮したエコ素材の「MDF」製品なども手掛けています。木材利用促進法の改正などを受けて、公商空間や中規模木造建築物の市場開拓を推進しています。

 2022年11月期上半期営業利益は46.9億円で前年同期比3倍となっています。通期計画は91億円で前期比2.4倍の見通しで、上半期決算発表時に従来計画の47億円から大幅に上方修正しています。

 原材料価格上昇で住宅建材事業は伸び悩んでいますが、住宅需要の回復が続く中、ウッドショックによる原木不足や価格高騰の影響で需給がひっ迫し、合板の販売価格が大きく上昇しているようです。年間配当金も36円から60円に引き上げ、前期比では28円の増配を計画しています。

 上半期の高い進捗(しんちょく)率に加えて、住宅建材事業での価格改定効果なども見込めることから、通期業績には一段の上振れも想定できるでしょう。その際は、17.4%という現在の配当性向から見ると、配当水準も一段の引き上げが期待できるとみられます。

 ただ、中期的には中・大規模建築の木造化が進む可能性がありますが、2023年11月期業績は、合板価格のピークアウトの影響が懸念されます。2022年11月期の本決算発表前のタイミングでは、いったん利益確定することが妙味となるでしょう。