自動車関連セクターに注目。景気拡大に効果的と実証
今回の注目セクターは自動車関連です。
4月に新エネルギー自動車セクターを取り上げています。また、3月にはBYD(01211)を注目銘柄の一つに挙げています。ほとんどの銘柄で株価は上がってしまったのですが、そうした銘柄に関してもテクニカルに押し目を探るなど、引き続き注目してください。
今回は本土系大手自動車メーカー、自動車部品メーカーを取り上げました。
産業のすそ野が広く、波及効果の大きな自動車産業に対しては、中央、地方両政府から減税、補助金などに関する政策が5月中旬以降、矢継ぎ早に発表されています。
15日に行われたGDP(国内総生産)、月次統計の発表に関する記者会見において、自動車生産の急回復が6月の鉱工業生産の回復(5月:0.7%増、6月:3.9%増)の主な要因であると報道官は明言しています。
自動車産業への需要拡大政策は景気を拡大させるのにとても効果的だということが改めて実証されたわけですが、政策効果はそれだけではありません。
新興の新エネルギー自動車メーカーの台頭に加え、大手メーカーのBYDが3月に石油燃料自動車の生産を中止するなど、本土では業界全体で新エネルギー自動車への転換が急速に進んでいます。
それは、自動車といった製品において、通信、センサー、AI技術などの搭載によるスマート化が急速に進んでいることを意味しています。
自動車産業への支援策は短期の景気対策だけでなく、イノベーションを加速させるといった長期の成長戦略としても大きな役割を果たしています。
具体的な注目銘柄は以下の通りです。
注目株1:長城汽車(02333)
SUV、ピックアップトラックでは国内最大手の民営自動車メーカーで、2021年の乗用車販売台数では業界第8位です(総合乗聯会データより)。魏建軍CEOが1984年、河北省保定市で設立した郷鎮企業が前身です。
大手が手掛けなかったピックアップトラックや、国内事情に合ったSUV市場を集中的に攻めたことで規模を拡大、2003年、民営自動車メーカーとしては初めて海外上場を果たし、資金調達に成功したこともあり、今や大手自動車メーカーの一角を占めるまで成長しています。
2021年12月期の販売台数は128万台。この内、ピックアップトラックが19%、SUVが71%、セダン(主に新エネルギー自動車)が10%を占めています。ピックアップトラック、SUVを中心に、ロシア、南アフリカ、オーストラリア、サウジアラビア、チリなどへ輸出も行っています。売上ベースでの輸出比率は12%です。
2021年12月期業績は32%増収、25%増益でした。販売台数は、セダン(新エネルギー自動車など)が140%増となるなど全体で15%増加し、業績をけん引しました。
2022年12月期の市場予想は29%増収、29%増益です。1~6月の販売台数は16%減ですが、6月単月では1%増と急回復しています。7月14日に会社側が発表した2022年6月中間期利益見通しは50~67%増益です。
政策効果がしっかりと表れています。当局は農村地区を含め、広く需要を拡大させようとしています。政策の恩恵を受けやすい車種も多く、今後業績の上方修正が期待できそうです。
長城汽車の月足
注目株2:吉利汽車(00175)
本土を代表する民営の自動車メーカーで、2021年の乗用車販売台数では業界第4位です(総合乗聯会データより)。実質的な親会社である浙江吉利控股集団は、積極的な買収戦略によって、ボルボ・カーズ(スウェーデン)、ロータス(イギリス)などの国際的な自動車メーカーを傘下に収めており、メルセデス・ベンツ・グループにも出資しており、大株主となっています。
2022年1~6月の販売台数は61万3,842台。車種別ではセダンが39%、SUVが59%、MPVなどが2%、ブランド別では吉利が82%、ボルボ・カーズと共同出資(同社が50%出資)によるLynk & Coは13%、EVブランドのZEEKR、睿藍(同社が50%出資の子会社で生産)などが5%です。また、新エネルギー自動車は19%、輸出は14%です。
2021年12月期業績は10%増収、12%減益でした。二桁増収ながら、販売台数は半導体不足などの影響で、計画に対しては87%止まりとなりました。製品構成の変化から粗利益率は上昇したのですが、販管費負担増を吸収しきれず、減益を余儀なくされました。
2022年12月期の市場予想は27%増収、39%増益です。会社側が公表している販売台数目標は24%増の165万台です。1~6月の販売台数は3%減ですが、6月単月では26%増と急回復しています。半導体不足を克服しつつあり、政策効果により、下期業績は急回復すると予想します。