安倍晋三元首相銃撃・死去という衝撃的なニュースが飛び込んだ先週。日本株は反転上昇しました。

 自民党議席増という参議院選挙の結果を受けた今週7月11日(月)から15日(金)は、株価の上昇継続に期待が持てる1週間になりそうです。

先週:対中関税見直し、原油安でグロース株好調。イオン急騰! 

 7月8日(金)、日本株の長期上昇に大貢献したアベノミクスの立役者・安倍晋三元首相殺害というショッキングな事件が発生しました。

 この悲報で一時急落したものの、先週の日経平均株価は581円高と上昇に転じました。

 10日(日)の参院選で、自民党が単独で改選議席の過半数を獲得したことを受け、今週の日本株は続騰して始まりそうです。

 先週の上昇を支えたのは、5日(火)に報じられた米国ジョー・バイデン大統領の対中関税見直し報道でした。

 歴史的な物価上昇に悩む米国が、中国からの消費財輸入にかけている関税の引き下げに踏み切れば、中国が最大の貿易相手国である日本にとっても朗報です。

 同じ5日に、世界的な景気後退懸念から、原油価格が急落したことも、インフレ鎮静化の兆しと受け取られ、株価の反転上昇につながりました。

 週前半には、米国長期金利の指標となる10年物国債の利回りが一時2.8%を割り込む水準まで低下しました。

 また、金利低下が株価の上昇につながりやすい新興成長株主体の東証グロース市場指数が週間で5%も上昇しました。

 米国でもハイテク株主体のナスダック総合指数が週間で4.6%高、グロース(成長)株が世界的に好調な1週間となりました。

 8日(金)発表の米国雇用統計の6月非農業部門雇用者数は、予想をはるかに超える前月比37.2万人増という結果に。

※米国雇用統計に関して、詳しくはこちら:1分でわかる!雇用統計と株価の関係

 雇用が好調で人手不足が続くと、賃金上昇圧力で物価が高止まりしやすくなります。

 インフレが継続する懸念から、米国長期金利は一気に3.1%台まで上昇しました。

 しかし、金利が上昇すると急落しやすい米国株は、雇用統計発表後もなんとか前日比、横ばいで踏みとどまりました。

 日本国内では、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加しているのが気がかりです。

 ただ、行動制限にまでつながるかどうか微妙なこともあり、旅行代理店のエイチ・アイ・エス(9603)が前週比2.8%高するなど、旅行関連株はおおむね堅調に推移しました。

 また、株主優待ファンにも人気が高いイオン(8267)が6日(水)、2022年3-5月期決算で主力のGMS(総合スーパー)事業の業績好転を発表。

 イオンの株価は週間で12.5%も急騰しました。

今週:米CPIや決算発表に注目!株価には底打ちシグナル

 今週は13日(水)に、いまや雇用統計以上に注目度の高い、米国の6月CPI(消費者物価指数)が発表されます。

※CPIに関して、詳しくはこちら:1分でわかる!インフレと株価の関係

 前回、6月10日(金)に発表された5月CPIが予想を超える大幅な伸びになったことで、世界的に株価が急落したことも受けて、今回の発表に対しても警戒感が強まりそうです。

 14日(木)には、物価動向の先行指数といわれる米国の6月卸売物価指数、15日(金)には、物価高の影響もあって5月は前月比マイナスだった6月小売売上高も発表されます。

 物価がさらに上昇し、小売売上高が落ち込むのが心配です。

 そうなると、中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会)の強硬な利上げ継続やそれにともなう景気後退懸念に再び火がつき、株価が急落する可能性もあります。

 今週からは、米国企業の2022年第2四半期(4-6月期)の決算発表シーズンが到来します。

 中でも14日のJPモルガン・チェース(JPM)モルガン・スタンレー(MS)など、週後半の米国金融企業の決算発表に注目が集まるでしょう。

 日経平均株価は、世界的景気後退懸念や半導体株の急落で7月1日(金)に2万5,841円の安値を付けました。

 しかし、6月20日(月)につけた安値2万5,520円を下回らず、上昇に転じています。

 下落相場が終わる最初のシグナルとなるのは、前回つけた安値を下回らないで株価が上昇すること。

 その意味では、長く続いた下落相場に、下げ止まりのシグナルが点灯したようにも見えます。

 先週、凶弾に倒れた安倍元首相は、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災で低迷しきった日本株を、劇的に回復させた功労者でした。

 つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の創設やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の拡充など、個人投資家が貯蓄から投資に向かうための非課税制度の普及も、安倍政権下で実施されました。

 一方、ここ30年近く賃金がほとんど上昇しない中、円安の進行もあって、物価だけが2%超も上昇し始めています。

 アベノミクスの目玉政策だった日本銀行の金融緩和政策は今、曲がり角を迎えています。

 これからの日本経済がどんな方向に向かうのか?

 深く考えさせられる時期が来ているともいえるでしょう。