業績が良いのになぜか株価が下落する

 個人投資家の方とお話ししているとよく相談を受ける悩みの一つに、「業績が良い株を買ったのに株価が下落してしまった。どうすればよいか?」というものがあります。

 業績が良ければ株価も上昇する…。これは当たり前のことではありますが、現実に株式投資をしていると、必ずしもそうならないケースが多々あることが分かってきます。

 そして、業績が良いのでそもそもその株を売るつもりにもならず、持ち続けていたら、気がつけば多額の含み損を抱えた塩漬け株が出来上がってしまい、どうにもならなくなってしまう、というのが個人投資家の陥る典型的な失敗の一つです。

下落の理由(1)そもそもバリュエーションが高すぎた

 ではなぜ、業績が良いのに株価が下落をしてしまうのでしょうか? 考えられる理由はいくつかありますが、本日はその中でも代表的なものを二つご紹介します。

 一つ目の理由は、「そもそもバリュエーションが高すぎた」というものです。これは、昨年秋から足元にかけて、多くの成長株で実際に見受けられた事象です。

 例えば毎年増収増益で業績は絶好調、でもPER(株価収益率)は100倍とかなりの高水準、という銘柄も結構ありました。しかし、世界的な金利上昇とインフレにより、将来のキャッシュの価値が下落してしまいました。

 こうなると、成長株の高いPERは許容されなくなり、PERの水準訂正が生じます。

 もしマーケット参加者が、現時点でのPERの許容水準がせいぜい30倍程度だと判断していれば、PER100倍の銘柄の株価は3分の1以下にまで下落してしまいます。

 このようにして、業績が絶好調であったとしても、成長株の株価は軒並み大きく下落してしまうのです。

下落の理由(2)業績の悪化をプロ投資家が察知している

 もう一つ、大きな理由として考えられるのが、業績のピークアウトが近い、もしくはすでにピークアウトした、とプロ投資家が判断した場合です。これは特に、好景気から景気悪化へ移行する局面でよくみられます。

 好景気の間、当然ながら各企業は、その好景気が当面続くという前提で今後の業績の見通しを行います。ですから、今年度も来年度も、売り上げも利益も大きく伸びて増収増益が続く、といった業績予想を発表します。

 また、会社四季報に載っている数値も同様で、足元の景気が良ければ、それを前提とした予想数値になっています。

 しかし、ひとたび景気減速・後退の兆候が現れれば、好景気を前提とした業績予想のとおりにはならず、早晩業績予想も下方修正されます。プロ投資家はこの兆候をいち早く察知し、その銘柄への買いをストップし、逆に売りに転じてきます。

 ただ、企業側から業績予想の下方修正が発表されるまでは数カ月~半年程度のタイムラグが生じるのが通常なので、それまでの間は「業績予想は絶好調なのに株価はなぜか下がり続ける」という状況が生じるのです。

 まさに足元でも、増収増益で当期も過去最高益更新という予想が出ている銘柄の株価が半値以下で売られているケースがありますが、これは(1)のバリュエーション訂正だけではなく、(2)の将来の業績悪化も織り込んでいる可能性が高いのではとみています。

筆者が実践している対処法とは?

 このような状況で、自分自身が「好業績の株を買っているのだから多少株価が下がってもそのうち戻るさ」と思っていても、実際は株価が大きく下がって塩漬け株になってしまうことは非常に多くあります。

 そこで筆者は、どんなに好業績だろうが、どんなに将来有望と思っていようが、株価が25日移動平均線を割り込んだものは売却するようにしています。これにより、株価下落の初期段階で売ることができ、大きな損失を被ったり、塩漬け株をつくったりすることを避けられます。

 こう書くと、「業績が良いのだから株価が下がっても持ち続けるべきなのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際問題として、業績が良いという理由で持ち続けた結果、株価の下落により大きな損失を被ってしまう個人投資家がたくさんいるのが事実です。

 ですから、まず大きな損失を回避するため、損失が大きくなる前に売却・損切りすることを徹底するのが重要です。その上で、株価が再び反発したら買い直せばよいだけです。

「持っていれば上がるかも…」は大失敗につながる思考です。「持っていれば今よりさらに大きく下がるかもしれない…」というマイナス思考でいるくらいの方が、株式投資で大失敗を避けるためにはちょうどよいと思います。

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