ロシア国債がデフォルト(債務不履行)!?

 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは6月27日に、「5月27日が支払期日だった2本のロシアの外貨建て国債についてデフォルト(債務不履行)に該当する」との見解を表明した。

 しかし、ドル/ロシアルーブルの相場をみると、ロシアルーブルは3月以降ずっと買われており、ロシア国債がデフォルトという報道に全く反応していない。

ドル/ロシアルーブル(日足)

出所:石原順

「ロシアが外貨建てソブリン債のデフォルト(債務不履行)状態に陥った。旧ソ連の初代指導者レーニンが帝政ロシア時代の債務の履行を拒否した1918年以来、約100年ぶりとなる」と、ブルームバーグでは報道されているが、1998年8月にロシアは対外債務90日間支払い停止とルーブル建て短期国債の債務不履行を発表している。

 この「ロシア危機」と呼ばれる1998年のデフォルトはロシアが自らデフォルトの道を選んだもので、黒字倒産と呼ばれていたが、この時のロシアルーブルは大暴落している。

ドル/ロシアルーブル(月足)1997~2002年

(1998年8月のロシア危機でロシアルーブルは大暴落した)
出所:石原順

 ロシアの株式インデックスであるロシアRTS指数は2月後半から上昇を続けており、相場に波乱は起きていない。

ロシアRTS指数(日足)

出所:石原順

 米国がジョー・バイデン政権になって世界の二極化はさらに進行し、分断の方向にかじを切っている。その結果、市場も否応なく多極化が進んでいるのである。

 バイデン、カマラ・ハリス、ジェン・サキ、アントニー・ブリンケン、ロイド・オースティン、マーク・ミリーからなる米国新喜劇は「ロシアが崩壊する」という報道を垂れ流しているが、カネという実弾が投入されている市場はロシア・ウクライナ戦争を冷静にみているのである。

 ロシアよりも困っているのは、にっちもさっちもいかなくなった米国の方かもしれない。インフレに対処するために非伝統的な政策を段階的に廃止し、政策金利を引き上げれば、大規模な債務危機と深刻な不況を引き起こすリスクがある。

 しかし、緩い金融政策を維持すれば、2桁台のインフレに陥り、次の負の供給ショックが発生したときに深いスタグフレーションに陥るリスクも高い。

 米国はインフレ対策として利上げとQT(量的引き締め)を開始している。だが、そもそものインフレの原因は過去2年間の米国のMMT政策と、ESG、SDGsといったグリーンフレーション(バイデンフレーション)である。

 だから、インフレに追いつかない利上げをやってもインフレ退治には効果が薄いだろう。

S&P500指数(日足)

出所:石原順