円安をMax生かす投資とは

 総括すると、株式などリスク資産相場が下落し、世界の投資家が不安に駆られる状況で、少なくとも日本投資家は、円安によって相当に救われています。日本投資家からすると、いつしか円安に救われていても偶然で、無自覚で、円を自国通貨とするのだから投資とは言えないという思いがあるかもしれません。

 しかし、米金融緩和下での株式の大金融相場も、深く考えないうちに、投資をしたらもうかったという人が少なくないでしょう。米金利が上がり始めたら、米株価は反落したけれども、円安が進んで、日本投資家にメリットをもたらすというのも、立派なサイクル投資の一環です。

 そもそも外国証券投資は、その証券と為替それぞれのリスクをダブルでとる投資です。米国株のリスクに苦しめられる一方、為替サイドで大いにメリットが得られる場面なら、それを活かそうというだけの話です。筆者が早くから、円安をいかすよう提言してきたのは、そのためです。

 既に円安は「超」がつく領域に至っています。為替差益だけで20%以上の収益になっている投資家もいるでしょう。その点では、どこで円転(ドルを円に替える)しても立派な利益です。ただし、米利上げはまだ続き、世界の投機筋が最も分かりやすいテーマとしてドル買い円売りを継続しています。

 投機的相場というものは、不安定な高値波乱を招く一方で、思わぬとっぴな高値をもたらす可能性も秘めています。したがって、上値が140円台に至る可能性も含めて、今後3~12カ月に、130円台後半かそれ以上で段階的にでも円転するイメージを持っておくことを勧めます。

 その後、米金融引き締めが極まって、株式が逆金融相場、逆業績相場で落ちていくと、いずれ金融緩和に転じて、株式も金融相場で息を吹き返すというのがサイクルの発想です。米金利低下とともに、ドル/円が115円、110円と円高方向に進む中で、米株式相場が浮上するサイクルの基本型からすると、米株上昇率とドル安円高の変化率を比較考量しながら、円投(円をドルに替える)して段階的に米株投資を進めることになります。

 実は、ドル資産を増やすという尺度で捉えれば、このような比較考量も必要はありません。米金融緩和下で米株式の上昇を享受し、いずれ米金利上昇過程に移ってから、ドル高円安を見計らって円転するだけのことです。

 投資というのは、マクロ環境の追い風がある資産(為替を含む)に乗るだけです。そして重要なことは、追い風が巻くとか逆風になる変化にアンテナを張り、機会が見えたらサクッと見切り売りするだけです。

 米金利が低下するなら米株式を買い、金利が上がり始めたら株を売ってキャッシュを増やし、円安をにらんでやがて円転する、これだけです。金利という明快な尺度を見るだけで、サイクル投資、中期トレンド投資のメリットを最大限享受でき、頭を悩ますこともありません。

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