外国人投資家は小泉内閣と第2次安倍内閣を高く評価

 ここで2001年4月以降の日経平均の動きと、日本の政権推移を振り返ります。

小泉政権発足以降の歴代首相と日経平均の動き:2001年4月~2021年9月(8日)

出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフで、外国人投資家の大量の買いによって日経平均がダウ工業株30種平均(NYダウ)を大幅に上回る上昇率になった年が2回あります。赤丸をつけている、2005年と2013年です。2005年はNYダウが前年比0.6%下落する中で日経平均が40.2%上昇しました。2013年はNYダウが26.5%上昇する中で日経平均は56.7%も上昇しました。

 この2つの年の共通点は、「解散総選挙で自民が大勝、小泉純一郎首相・安倍晋三首相が強いリーダーシップを発揮」したことです。資本主義の構造改革・成長戦略が進む期待から、外国人が日本株を積極的に買ってきました。米国株以上に、日本株が魅力的になったと外国人が考えた年です。

 2012~2013年に日本株ファンドマネージャーだった私は、欧米・中東・中国・韓国の機関投資家とよく話しました。国が違っても、日本株をみている外国人投資家の考えには共通点がありました。アベノミクスがスタートした2013年によく聞かれたのは以下の言葉です(多数の外国人の言葉を筆者が要約)。

「社会主義的な政策を進める政党から資本主義政党に政権が戻ったので日本株のポジションを増やす」

 外国人がいかに日本の政治の変化をよく見ているかご理解いただくために、小泉政権以降の、解散総選挙前後の日経平均をお見せします。解散総選挙後の大きな動きは、外国人投資家が引き起こしています。

衆院解散総選挙前後の日経平均の動きを比較:総選挙の28営業日前から、58営業日後までの動き

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成。総選挙実施日直前の日経平均を100として指数化。▲28は28営業日前、30は30営業日後、50は50営業日後を示す

 2005年の第3次小泉政権による郵政解散選挙と、2012年12月の第2次安倍内閣がスタートした選挙の直後に、外国人投資家は、日本株を大量に買ってきました。

 一方、民主党政権が誕生した2009年、外国人は日本株を売ってきています。2021年岸田政権下の解散総選挙の後も、売ってきています。外国人の売りは、その時々の景況変化や国際情勢の影響も受けています。決して解散総選挙への評価だけで動いているわけではありません。ただし、解散総選挙も影響はしています。岸田政権が設立当初に表明した「金融所得への課税強化」「分配重視」の政策が、外国人投資家から見て「株式投資にネガティブ」ととらえられた可能性もあります。

 ただし、岸田首相が5月5日にロンドンでの講演で、「資産所得倍増プラン」を検討することを表明し「インベスト・イン・キシダ」と訴えたことで、外国人投資家の岸田政権を見る眼に変化が出た可能性があります。日本株は、以後、米国株が急落する中で、相対的に堅調に推移しています。