7月までの目測も立っているが、市場ムードの分岐に要注意

 そもそも、先週に演じた米国株の上昇の背景には、前週までのNYダウが90年ぶりに8週連続で下落するなど「下げ過ぎ」による反動をはじめ、年金基金の資産配分見直しに伴うリバランスの買い観測や、前週までとは異なる米小売企業の堅調な決算、週末に発表された米4月PCE(個人消費支出)物価指数でインフレの伸びが鈍化し、同時に発表された個人消費支出も市場予想以上に伸びたことなどを受けて、底入れ感が出てきたことが挙げられます。

 その一方で、「米金融政策とインフレが、どこまで米国の景気を冷やすのか」に対する懸念は根強く、米国をはじめとする景況感の動向を経済指標などから探る局面は続いています。

 今週は中国でPMI(製造業購買担当者景気指数)の発表があるほか、米国でもISM(米サプライマネジメント協会)景況指数や月初恒例の米雇用統計が予定されており、とりわけ、インフレ率が賃金の増加率を大幅に上回っている状況の中、米雇用統計における平均賃金の動向への注目が高まりそうです。

 また、米金融政策については少なくとも7月までの政策(金利)動向は読めていますので、その後の政策がどうなるかも焦点になります。

 具体的には、利上げやQT(金融引き締め)の開始によって、米景気への悪影響は少なからず避けられないのですが、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)までにインフレが収まっているのであれば、その後の金融政策ペースの緩和や景気回復の兆(きざ)しが見えてくる一方、インフレが続いてしまうと、さらなる引き締め観測が高まってしまい、景況感後退との「負のスパイラル」という見通しも浮上するため、相反するシナリオのあいだで株式市場のムードが頻繁(ひんぱん)に分岐することが考えられます。