前回のレポートでは、豪ドル/円の「26日標準偏差ボラティリティ」が10月に入ってピークアウトしたことから、相場は売りトレンドが消滅し調整相場の範疇にあると述べた。売りトレンドが消滅した後の豪ドル/円相場は、一旦戻り(上値)を試して、その後はレンジでの往来相場となっている。次のトレンドが発生するまでは、基本的にジグザグ型のレンジ相場を継続するだろう。

豪ドル/円(日足) +2σ近辺で頭打ちか?

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(赤)


(出所:石原順)

ドル/円相場に全く動意が見られないなか、10月に入っての豪ドル/円の上昇は豪ドル/ドルが牽引してきた。しかし、筆者の認識では現在の豪ドル/ドルの上昇にトレンドが出ているわけではない。豪ドル/円と同じ調整相場である。

ドル/円(日足) 全く動意がない

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド


(出所:石原順)

豪ドルの戻り相場は早かった。『通貨ヘッジファンドのための調査・顧問会社JWパートナーズのルカ・アベリーニ氏は「このリスク・ラリーは急速すぎるとともに感情的すぎて、信じられないほどだ」とし、「ほとんどのファンドマネージャーはこれに加わっていない」と指摘した。アベリーニ氏によると、トレーダーは再び豪ドルなど経済成長に敏感な通貨に舞い戻った一方でセーフヘイブンとしての円も買い、多くの新興国通貨を避けていると述べた』(WSJ 2011年10月17日)と報道されているように、強烈なリバウンド相場となっている。

しかし、豪ドルの正念場はここからだろう。豪ドル/ドルの1.04近辺は急落前のレンジ相場の下限であり、現在、21日ボリンジャーバンド+2σの水準となっている。そろそろ上値が重くなってくる可能性が大きい。

豪ドル/ドル(日足) +2σ近辺で頭打ちか?

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(赤)


(出所:石原順)

豪ドル/円の戻りも21日ボリンジャーバンド+2σ近辺で頭打ちとなっており、9日RSIも70を超えた後にピークアウトしている。相場は移動平均リボンの上抜けを試しに行ったが、押し戻されてしまった。相場のことなのでわからないが、目先の豪ドル/円の上値余地はあまりないと考えた方がよいだろう。

豪ドル/円(日足) 9日RSIも目先の天井を示唆?

上段:21日ボリンジャーバンド2σ(青)
下段:9日RSI(赤)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)と移動平均リボン(赤の帯)

上段:21日ボリンジャーバンド2σ(青)
下段:9日RSI(赤)


(出所:石原順)

円高警報として使っている20日ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)も、今週の相場で3日連続の上昇を記録した。現在、20日ATRの値がかなり高いレベルにあるので、相場は乱高下しやすい。まだレンジ相場の範疇ではあるが、一旦、円高への揺り戻しが起こる可能性がある。円高警戒シグナルが点滅しているので、ポジション管理に気を配りたい。

この先、10月23日のEU首脳会合、11月2日FOMC、11月3日のECB理事会(ECB総裁交代)・11月3日~4日カンヌG20首脳会議と重要イベントが目白押しだ。ここまでにポジションを軽くしておきたい。11月に入れば、苦境の伝えられるファンド勢も餅代稼ぎに動きだすだろう。

豪ドル/円(日足)と20日ATRの推移(2010年5月~2011年10月)

ATR上昇期=緑・ATR下落期=黄


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

今週は20日ATRが3日連続上昇を記録(赤の部分)=円高に注意したい


(出所:石原順)