「重要な問い」の答え

 重要な問いの一つ「ドル高でもなぜ金(ゴールド)相場が上昇しているのか?」は、ウクライナ危機勃発後の動向をもとに立てられたものであるため、時間軸としては「短中期」にあたります。

 先ほどの鳥の図で述べた短中期のテーマには「有事ムード」「代替資産」「代替通貨」の3つがありました。これら3つを使い、この問いに答えます。

図:「材料の足し引き」 金(ゴールド)

出所:筆者作成

 3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺(そうさい)され、結果的に上昇していると考えられます。「ドル高(テーマは代替通貨)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「有事ムード」も「代替資産」も考慮すれば、上昇していることを説明できます

 次はもう一つの問い「OPEC増産でもなぜ原油相場が上昇しているのか?」です。原油についてですが、こちらも時間軸は短中期です。テーマは「産油国の政情」「産油国の政策」「需要動向」の3つです。

 3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺され、結果的に上昇していると考えられます。「OPEC増産(テーマは産油国の政策)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「産油国の政情」も考慮すれば、上昇していることを説明できます。(「需要動向」も下落圧力を生み出している)

図:「材料の足し引き」 原油

出所:筆者作成

 材料を、抽象度を高めたいくつかのテーマに分類し、影響度の足し算引き算を行うことで、「重要な問い」に回答することができました。材料を点で見る傾向があった「過去の常識」が語られた時代にはなかった発想だと思います。

「現在の常識」の柱「材料の俯瞰と影響力の足し引き」の手順
1. 値動きに関わる、複数の抽象的なテーマを設定(時間軸別)
2. 材料をテーマごとに分類
3. それぞれの材料起因の上昇・下落圧力を足し引きする