上げに比べて下げのスピードは非常に速い

 最近、株価下落に対する注意、啓蒙(けいもう)をする内容のコラムを多く書いています。

「そんなのではなく、これから上がる株や銘柄が知りたい」とか、「もっと元気が出るような内容が良い」というお声もあるかもしれません。

 それでも筆者が株価下落を警戒したコラムを書いているのは、下げ局面こそ個人投資家の多くが失敗してしまう原因が数多く存在するからです。

 株価上昇局面では、極端な話、株を買って持っているだけで良いので、たまたまラッキーでうまくいくケースも正直よく見かけます。

 しかし株価下落局面では、逆に株を持ち続けるほど株価が下がって損失が膨らんでいきますので、より具体的な戦術やルールが求められます。

 実力の差が大きく現れるのが株価下落局面なのです。

 ところで皆さんは、株価が上がるスピードと下がるスピードのどちらが速いと思いますか?

「上がるのも下がるのも同じくらいでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、過去の経験則上、上がるときのスピードより下がるときのスピードの方がはるかに速いです。

 下記のチャートを見ていただいても、上昇しているときの株価の角度より、下落している時の角度の方が急であることが分かると思います。

弁護士ドットコム(6027)の月足チャート(2017年5月~2022年4月)

(出典)MARKETSPEED2

事前に決めたルールを守ること

 この、「株価が下落するスピードが速い」ことにより、個人投資家がどのような影響を受けるのでしょうか?

 あらかじめ事前に保有株売却のルールを決めておかないと、株価の下落が大きくなったときに心の準備ができておらず、株価が安いところで投げ売り、パニック売りをしてしまうのです。

 ルールを決めていないと、株価下落の初期段階では「今までみたいに下げは一時的なものですぐ戻るだろう」と高をくくってしまいます。

 ところが株価が天井を付けた後の本格的な株価下落局面に突入すると、株価はかなり速いスピードで下落をします。

 その結果、「あっ! いつもと違う下げだ。これはまずいかも」と思った時にはかなり株価が大きく下がっていることが多く、今さら売るに売れず塩漬けにしてしまうか、慌ててパニック売りをしてしまうかのどちらかになってしまいます。

 ですから、あらかじめ持ち株を売却するときのルールを決めておき、かつそれを順守するようにしましょう。それにより、株価下落局面であっても損失を最小限に食い止めることができます。

 筆者はシンプルに25日移動平均線割れで売却としていますが25日移動平均線ではなく75日移動平均線を使う、直近安値を割ったら売却、といったように、ご自身でしっくりくるルールを決めていただければ結構です。