北京のロックダウンは「秒読み」か?

 中国人民銀行を含めた金融当局は、足元の人民元安や株式市場の混乱に対しては「想定内」という観点から、現実的に対処が可能という立場を崩していないように見受けられます。

 一方、ウクライナ危機は硬直化し、ロックダウンに関しては、経済の首都・上海だけでなく、政治の首都・北京でも感染が拡大し、ロックダウンまで「秒読み」とさえ言われています。

 党大会まではまだ約半年の時間が残されていますが、中国共産党指導部としては、上海の二の舞をほうふつとさせるような、感染拡大が首都北京を襲う事態を何としても避けたいでしょうし、避けようとするでしょう。

 4月26日、上海における新規感染者1万3,562人に比べ、北京では34人と限られてはいますが、感染者が三桁、四桁になれば、ロックダウンは必至でしょう。私が本稿を執筆している4月27日午前(日本時間)現在、北京では上海で行われてきたように、市民への大規模なPCR検査が始められており、それに伴い、市民はロックダウンに備えて地元のスーパーマーケットなどで「爆買い」を始めています。

 北京がロックダウンとなれば、供給網や個人消費への影響は言うまでもなく、人民元安や株価下落に如実に反映されているように、中国経済全体への期待値がさらに低下し、景気の下振れ圧力はさらに増大するという悪循環を促さずにはいられないでしょう。

 中国は5月1日に3大祝日の一つ労働節(他は春節と国慶節)を迎え、4月30日から5月4日まで5連休となります。 例年であれば、故宮や天安門広場、万里の長城などは観光客でいっぱいになりますが、現状、北京市当局はロックダウンを検討している以外に、外地からの流入を制限しようとするでしょう。連休に期待される消費増加にも不安要素が立ち込めているのです。上海でも同様でしょう。

 先週のレポートで2022年1-3月のGDP成長率を分析しましたが、その後、各地方の成長率に関する統計結果も続々と出てきています。数値が高かったのが江西省、福建省、湖北省で、全国平均4.8%に対し、6.7~6.9%を達成。その主たる要因として、コロナ禍の経済活動への影響が小さかった点が挙げられます。

 一方、この期間新型コロナへの対応に見舞われた上海市と天津市はそれぞれ3.1%、0.1%と落ち込み、コロナ禍と経済成長の相関性が見て取れます。上海ではロックダウン開始から一カ月がたとうとしており、4~6月の景気悪化が懸念されます。

 ちなみに、北京市は全国平均と同水準の4.8%でした。仮に同地でこれからロックダウンが起こるのだとすれば、こちらも4~6月の景気悪化は必至でしょう。政治と経済の二大巨頭である北京と上海がそろってロックダウン、マイナス成長のような事態に陥れば、「中国経済は大丈夫か」という投資家心理を逆なですることになり得ます。

 中央政府は昨今、中国経済は「供給制約、需要縮小、期待値低下」から成る三重圧力に見舞われているという見解を披露してきましたが、状況次第では、三重圧力が掛け算で膨らんでいくリスクも否定できないと見るべきです。大型連休を挟み、中国経済の動向からますます目が離せません。