日本の政策はMMT(現代貨幣理論)の狂気の最たるもの
円が売られるのは当然であろう。世界中の中央銀行が、債券利回りの上昇は正当なインフレ懸念を反映していることを暗黙の了解として、より積極的な金融引き締めに動いているときに、「日本銀行は逆に国債利回りが0.25%以上に上昇しようとするとQE(無制限緩和)を加速しなければならない」という奇妙な政策を行っているのである。
ドル/円(日足)
先日の0.25%の指値オペという狂気の無制限緩和をみて、世界の投機筋は、「日本は金利の正常化が許されない国」であることを認識したのである。日本の政策はMMT(現代貨幣理論)の狂気の最たるものであり、金融崩壊は必至である。つまり、円はもっと、もっと下がるということだ。
日本は膨大な累積国債(借金)を抱えており、金利がわずかに上昇するだけでも即座に債務危機に陥る。世界の債務残高の対GDP(国内総生産)比の上位は、日本、スーダン、ギリシャで、いずれも200%を大きく超えている。以下、エリトリア(175%)、カーボベルデ(160%)、イタリア(154%)と続いている。
国別の債務残高の対GDP比
「皆のおカネ(公金)は政治家に管理されると誰のおカネでもなくなる。そして、あきれかえることに、その希少資源は助成金という破廉恥な票の買収に、とてつもなく巨額で壮観なピラミッドのような公共投資に、権力の触手を伸ばしていく巨大官僚組織の増殖・維持に浪費されてしまうのだ。
もちろん、公的支出は増加する一方である。減少することはない。各省庁の予算が権力の尺度となるからだ。その削減を計画するものなど、ただのひとりもいない。
公的資金では、損益計算書や貸借対照表の心配がない。また、会計の真実性を確認するための説明や監査を要求する投資家もいない。そうした資金の運用で犯した失敗に対して責任を持つ人など誰もいない」
(フェルナンド・デル・ピノ・カルボ=ソテロ)
最近の日本の経済政策、すなわち、破滅的なアベノミクス政策は、円安によって企業収益を上げ、その恩恵が家計に還元されるのを待つことが目的であった。しかし、トリクルダウンはいっこうに起こらず、国民の有意義な賃金上昇をもたらすという点では大失敗であった。
そして、日本人は今、「給料は上がらないが物価は上がる」という典型的なスタグフレーションの最中にいるのである。この傾向は、これからもっとひどくなるだろう。
ソシエテのアルバート・エドワーズは、『1ドル150円まで円下落も、円安乗る動き-ソシエテGエドワーズ氏』(3月25日 ブルームバーグ)という記事の元になったレポートで、「円が下落すると、その傾向は『キャリートレード』として知られる自己増殖的な現象となり、参加者は利回りの高い海外投資への資金調達のために円安の中で積極的に借入を行う」と警告している。
アルバート・エドワーズによると、「円が主要なサポートレベルを割り込んで急落し始めると、円キャリートレードへの投機筋の意欲は著しく高まる」という。要するに、ファンダメンタルズがテクニカルと結びついて、円キャリートレードが爆発的に拡大する。この現象は以前にも見られたことで、特にリーマンショック(世界金融危機)の前の数年間に顕著であった。
ドル/円(月足)
通常、円安の資金は利回りの高い米国債などの類似商品に投資されるが、リスク志向が高まると、その時々の勢いのある取引に投資されるようになる。それはコモディティかもしれないし、株式かもしれない。
もちろん、こうしたキャリートレードは最終的には涙をのむことになるが(2008年のリーマンショックで巻き戻されたように)、日銀の金融政策の弱点を突いた円キャリートレードが再び現れると、円はこれからさらに下落する可能性があるということである。