入れるなら入るに限る たかが5年されど5年

 なんとなく対象外の人のほうが多い印象を受けますが、実際にはそうでもありません。多くの60歳代が高齢期も働き続けており、その中心は厚生年金加入者です。彼らにとっては60歳でiDeCoを止めることなく加入ができます。

 定年退職を60歳で迎えた場合、それ以降は賃金水準の低下が生じる場合があり、資産形成余力は弱まるかもしれません。しかし、所得控除の力を生かして節税をするのはあと5年しか残されていません。

 できればiDeCoの加入は継続して拠出を続けていきたいところです(金融機関ごとの取り扱いにもよりますが、手続き不要で60歳以降も自動的に拠出継続となることが多いようです。詳しくは運営管理機関の取り扱いを確認してください)。

 仮に掛金の20%相当が非課税となる場合、月2万3,000円とすれば5年の累計掛金額が138万円で、27.6万円の節税を自分の老後の経済的余裕に変えられることになります。老後の財産としても10回くらいの旅行資金になりそうです(事務手数料や運用益は考慮せず)。

「たかが5年」ではなく「されど5年」の積み立てが、人生100年時代の老後を豊かにしてくれると考え、加入を継続してみてほしいと思います。

 ただし、いくつか注意点もあります。すでに老齢給付金としてiDeCoを解約、一時金として受け取っておいて、改めてiDeCoに入り直すというのはできません。さすがにこれは虫がよすぎるということでしょうか。覚えておいてください。

将来的には、誰もが65歳まで拠出できるようになるか

 先ほど、60歳以降はiDeCoに拠出ができない人を紹介してきましたが、キーワードは「年金保険料を納めているか」です。

 20歳から60歳まで完璧に国民年金保険料を納めてきた(厚生年金加入であった時期を含む)人は、60歳以降無職になるとiDeCoに拠出できず、未納期間があった人は拠出できるというのはなんとも不思議な感じですが、これも年金保険料を納めているかどうか、を軸としているからです。

 これは一見すると面倒なルールのようですが、将来の改正を見越した布石にもなっています。「65歳まで国民年金保険料を納めることのできる改正」があれば、自営業者なども65歳までiDeCoに積み立てができるように自動的に変更されるからです。

 現状、「60歳まで国民年金保険料を納める」→「5年待つ」→「65歳から国民年金を受け取る」という謎のギャップが生じているわけですが、65歳どころか70歳現役社会に移行している時代に大きなブランクをわざわざ残していることになります。また、マクロ経済スライドの実行による年金水準の低下も懸念されます。

 もし「65歳まで国民年金保険料を納める」仕組みに変え、現状の満額の年金(40年納付)を12.5%アップ(45年納付し、納付期間が12.5%伸びるため)とすれば、加入者にとっては利益のほうが多い改正となります。

 実は厚生労働省の社会保障審議会年金部会でも何度か議論の俎上(そじょう)に上っており、将来年金制度改正を行う中でいつか実現するのではないかと思います(できれば次回の改正で!)。

 そのときには「誰もが65歳までiDeCoに拠出できる(ただし年金保険料は納めること)」ということになるのではないでしょうか。

 いずれにせよ、60歳以降も継続雇用で働く会社員はこの制度を活用し、老後の厚みをより確かなものとしてほしいと思います。

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りそな銀行解説記事