先週末3月25日(金)の日経平均株価は2万8,149円で取引を終えました。前週末終値(2万6,827円)からの上げ幅は1,322円と大きく、ここ2週間で9日連騰となったほか、上げ幅合計(2,987円)も3,000円近くに迫り、株価水準も2万8,000円台へと切り上げていきました。

 今週は3月から4月への「月またぎ」、そして「新年度相場入り」となります。足元で強い動きをみせている株式市場ですが、「まだまだ株価上昇が続くのか?」と、「上昇が一服した後の値動きはどうなるのか?」の2つが気になるところです。

 そこで、今回はこれらの気になる点について、先週の状況を整理しつつ、考えていきたいと思います。

図1 日経平均(日足)とMACD(2022年3月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、連休明けで4営業日となる中、上昇基調が続く展開となりました。冒頭でも述べた通り、週末の25日(金)時点で9連騰となったほか、2万7,000円水準や75日移動平均線、そして2万8,000円と、次々に節目を突破していきました。

 さすがに連騰が続いていたこともあり、25日(金)の取引は、200日移動平均線でいったん上値が抑えられ、始値がこの日の高値となる、いわゆる「寄付天井」となっていることは気がかりで、株価が下落した際に、これまでに突破してきた節目をサポートにできるかを見極める展開も想定されるものの、5日移動平均線と25日・75日移動平均線とのゴールデン・クロスや、下段のMACDが「0円」ラインを上抜けるなど、上方向を意識させるサインは多く、全体的には強い印象です。

 また、あと4.4%(1,240円)ほど上値を伸ばせれば、今年に入ってからの高値(1月5日の2万9,388円)に追いつくことになるのですが、足元の勢いのまま達成できるのかについて考えていきます。

 まずは、過熱感についてです。

図2 日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2022年3月25時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図2は、日経平均の25日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものです。

 先週末25日(金)時点の乖離率(ピンク色の線)はプラス6.71%となっており、3月8日のマイナス7.5%から一気に改善したほか、プラス2σ(シグマ)も超えてきたことが分かります。

 また、ここ1年半の傾向として、乖離率がマイナス7%前後で底を打ち、その後の反発については、プラス3%あたりで戻りが止まるパターンと、プラス7%あたりまでさらに上値を伸ばすパターンに分かれ、足元の状況は後者のパターンに該当するといえます。

 昨年9月14日にプラス7.6%、一昨年の11月17日にプラス8%まで乖離が進んでいたことを参考に、先週末時点の値で計算すると、プラス7.6%で乖離が進めば2万8,383円、プラス8%だと、2万8,489円となります。

 そのため、今後も上値を伸ばしていくには、相場がさらに過熱感を帯びるか、新たな買い材料が出てくるかが必要になりそうです。

 続いて、相場の過熱感についてもみていきます。

図3 日経平均(日足)の動き(2022年3月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は少し期間を長めにとった日経平均の日足チャートです。

 足元の日経平均の上昇は3月9日の安値から3月25日の高値まで、12営業日で3,657円上昇していることが分かりますが、これは、昨年8月20日の年初来安値から、9月14日の年初来高値まで株価が駆け上がった時(18営業日で3,841円上昇)に匹敵するスピード感ですので、短期的にはかなり過熱感がある状況と考えることができます。

 昨年の上昇時は、その後に大きく下落していく展開へと転じていたこともあり、今回についても、上値余地を探ると同時に、上昇が一服した後の値動きを想定しておく必要もありそうです。

 その場合、上の図3で色塗りされている価格帯(2万7,000~2万8,000円)の範囲内で下げ止まれるか、または、先ほどの図1の移動平均線、もしくは、図2のボリンジャーバンドのプラス2σ~マイナス2σの値などが下値の目安になりそうです。

 したがって、短期的には、多少の株価の上振れ余地はあるものの、過熱感を踏まえると、このままの勢いで1月5日の高値を超えるのは難しいかもしれません。ただし、中長期的にはその可能性は残されていると思われます。

図4 日経平均(週足)の動き(2022年3月25日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は日経平均の週足チャートです。先週の値動きによって大きい陽線が出現し、13週と26週の2本の移動平均線を上抜ける、「2本抜き」となっています。

 一般的に、1本のローソク足が複数の移動平均線をまたぐと、抜けた方向に株価を伸ばしやすいといわれていますので、週足チャートでも上方向への意識を強めつつあるといえます。

 また、昨年9月14日の高値から直近の3月9日の安値の下げ幅の戻りをフィボナッチ・リトレースメントでみると、「61.8%戻し」をうかがっている状況です。この水準をクリアし、次に控える76.4%戻しの株価(2万9,352円)は、1月5日の高値とほぼ同じ株価水準となります。

 このように、日経平均の動きをテクニカル分析で捉えると、チャートの形状がかなり改善しているのですが、その一方で、今週は週末の4月1日(金)に、日銀短観と米雇用統計の発表を控える中、権利落ち日となる30日(水)に、理屈の上では配当落ち分だけ株価が下がることになるほか、2万7,000~2万8,000円の価格帯は、昨年の日経平均が下げ止まっていた「下値ゾーン」でもあるため、利益確定売りや戻り待ち売りをこなす買いの強さが試されることになります。

 また、先週からの株高要因を整理してみると、(1)原油価格の下落、(2)直近までの株価の下げ過ぎの反動と割安感、(3)円安の進行、(4)ウクライナとロシアの停戦交渉への期待、(5)国内の新型コロナウイルスの規制緩和、(6)FOMC(米連邦公開市場委員会)を無難に通過したアク抜け感、(7)市場寄り(?)へとかじを切ったと受け止められた中国の経済政策の方針、(8)ロシア国債のデフォルト回避など、多くの材料が重なったことが株価上昇につながったと考えられます。

 ただし、これらのうち、継続的な株高に寄与するものは多くはなく、中には相場の重しに転じかねないものもあります。

 さらに、中長期的には、米金融政策の正常化やウクライナ情勢などの影響によるリセッション(景気後退)懸念がくすぶっていること、足元の株価反発によってPER(株価収益率)などの面で割安感が薄れてきており、ここからは企業業績に着目した銘柄の選別が進むことが想定されることなどを踏まえると、積極的な上値追いはひとまず一服し、しばらくは株価の落ち着きどころを探る値動きが基本的なシナリオとなりそうです。