魚の目で捉える流れの変化

 短期的反発がそのまますんなり、企業業績の好調を背景にした業績相場に移行してくれれば良いのですが、そう簡単にはいくまいと思わせる波紋が広がっています。

 今注視すべき、起こりつつある変化を列挙します。

(1)停戦ケース
 ロシアとウクライナが何とか停戦合意に至ってほしいと願いつつ、その場合でも、欧米など西側の対ロシア制裁は継続する可能性が高いと危惧されます。

(2)インフレ
 燃料資源や穀物の供給不安が続き、それらの相場高によるインフレ懸念も解消されないでしょう。つまり、コロナ禍ゆえのインフレが、有事インフレ分かさ上げされる構図は続くと想定します。

(3)金融財政政策
 FRB(米連邦準備制度理事会)は有事の不確実性への配慮から、タカ派姿勢を緩め、かさ上げされたインフレに対してさらに後手に回っています。このことはインフレ高進による景気減速リスクを高めます。

 特に欧州は2022年前半にもリセッションになる可能性があり、欧米ともに財政も再び拡張する可能性から、インフレを促し、スタグフレーションの様相を強めそうです。

(4)企業決算
 株式相場の中間反落過程でも良好だった企業業績は、見通しの下方修正が相次ぐと見られ、4月下旬の決算発表が神経質なイベントになりそうです。

 
 こうした変化を踏まえると、米株式相場の業績相場への道筋は不安定化し、業績相場らしい様相に至ることができたとしても、短命化の恐れが高まると想定されます。

 さらに悪いサイドでは、有事がこじれてのテール・リスクが排除されず、良いかもしれないサイドでは、米国のダメージが欧州ほど悪くないことの影響があるため、まだまだ観測と精査が必要です。

 以上を改めて総括すると、短期投資なら機敏に利益確定の売り逃げ、中期投資なら焦らず対象と時期を選別、長期投資なら気長に分散買いが、相場への含意と考えます。

 筆者は、投資は、相場がマクロの追い風を受け、自律的な上方志向のリズムを持つときにじっくり臨むアプローチです。

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