先週末3月18日(金)の日経平均株価は2万6,827円で取引を終え、前週末終値(2万5,162円)からの上げ幅は1,665円と大きなものとなりました。週足ベースでも5週ぶりに反発しましたが、それまでの4週間のあいだに2,500円以上下落していたため、下げ幅に対して65%ほど値を戻した格好です。

 今週の株式市場は連休明けで4営業日となりますが、こうした足元の株価反発基調が継続して加速していくのか、それとも終盤を迎えて株価上昇が一服するのか、もしくは再び下落に転じるのかなどを探っていくことになりそうです。相場のムードが改善しつつある一方、売買タイミングの判断という面では意外とやっかいな状況なのかもしれません。

 そこで、まずはいつもの通り、先週の日経平均の値動きから振り返ってみます。

(図1)日経平均(日足)の動き (2022年3月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均は、前営業日比でプラスの日が続き、結局5連騰となりました。週初の14日(月)と翌15日(火)は、まだ様子見姿勢もかいま見えていましたが、16日(水)からは一気に株価の戻りに勢いが出てきた印象です。

 株価は25日移動平均線を上抜けてきたほか、前回のレポートでも紹介した、「買い」の仕掛けサインである、5日と25日の移動平均線のゴールデン・クロスももうすぐ達成しそうにみえます。

 株価水準についても、いわゆる「窓」開けを伴って2万5,000円台から2万6,000円台後半まで切り上がり、2万7,000円水準をうかがうところまで来ました。日経平均の2万7,000円台は、昨年の下落局面で底打ちした価格帯であり、リスクの「オン」と「オフ」の境界線として意識されやすいと思われます。

 そのため、今後は上の図1で色塗りされているゾーンを中心に、戻り待ち売りや利益確定売りが出やすいと考えられ、節目の2万7,000円やゾーンの中にある75日移動平均線などが、目先の超えるべきハードルになります。

 これらのハードルを突破して上昇に弾みがつく期待がある一方、上値の抵抗となって売りに押される展開も想定されます。その場合、25日移動平均線や2万6,000円水準など、先週上抜けてきた節目がサポートとして機能するかが注目点です。

(図2)TOPIX(日足)の動き (2022年3月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ちなみに、先週のTOPIX(東証株価指数)の動きについてもチェックすると、5日と25日移動平均線のゴールデン・クロス待ちや、株価の節目に対するハードルとサポートへの意識など、基本的なチャートの見方は、先ほどの日経平均と同じですが、TOPIXは日経平均よりも先にリスクの「オン」と「オフ」の境界線とされる1,900p超えを達成し、戻り待ち売りや利益確定売りが出やすいゾーン(1,900~1,950p)に足を踏み入れています。

 そのため、TOPIXの1,900p維持と75日移動平均線トライの動向が、相場の強気と弱気とのムードのバロメーターになるかもしれません。

 続いて、目先の日経平均の想定値幅についても考えていきます。下の図3は日経平均と75日移動平均との乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものです。前回のレポートでは25日移動平均線の乖離率を紹介しましたが、先週の日経平均が25日移動平均線を上抜けてきたため、次の目標である75日移動平均線でみていきます。

(図3)日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年3月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 先週末18日(金)時点の75日移動平均線乖離率はマイナス2.49%で、まだ75日移動平均線までの距離を残してはいますが、乖離率自体はボリンジャーバンドの中心線(MA)を上抜けてきました。

 このまま戻り基調が続くのであれば、18日(金)時点の75日移動平均線の値(2万7,494円)や、プラス1σ(2万7,177円)、プラス2σ(2万8,013円)などが上値の目安となりそうです。反対に、下値の目安については、MA(2万6,344円)、マイナス1σ(2万5,508円)、マイナス2σ(2万4,673円)などになります。

 また、先週の乖離率の改善によって、マイナス2σとマイナス1σの範囲を往来しながら下落トレンドを継続してきた「バンドウォーク」から抜け出すことができました。株価が大底を打ったのか、しばらく底値圏を形成するのか、再度下落するのか、現時点での判断はまだ難しいですが、ひとまず下落基調の一服を示唆(しさ)するサインが出たことはかなり明るい材料といえます。

 次に、米国株市場についてもみていきます。下の図4をみても分かるように、先週末18日(金)時点でのNYは、リスクオンを強めているような状況です。

(図4)米NY(日足)とMACDの動き(2022年3月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の米NYダウ(ダウ工業株30種平均)は、リスク「オン」と「オフ」の境界線とされる3万4,000ドル台乗せを回復しただけでなく、50日移動平均線も上抜けしてきました。さらに、5日と25日移動平均線のゴールデン・クロスも達成しています。

 また、下値についても、3月に入って下値を切り下げていた日経平均やTOPIXと異なり、NYダウの下値は切り上がっているほか、図4下段のMACDも右肩上がりの回復基調の中、「0ドル」ライン超えも視野に入っています。

 このまま、50日移動平均線を維持し、200日移動平均線も上抜けできれば、さらなる株高シナリオが現実味を帯びてくるわけですが、そのためには米NASDAQの動きがポイントになってきます(下の図5)。

(図5)米NASDAQ(日足)とMACDの動き(2022年3月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の米NASDAQも、株価が25日移動平均線を回復するなど、改善傾向をみせていますが、50日移動平均線を抜け切れていないことや、リスク「オン」と「オフ」の境界線である1万4,000pのクリア、5日と25日移動平均線のゴールデン・クロスの達成についてはこれからという状況です。

 NYダウほどの力強さはまだ感じられませんが、2月24日と3月14日の安値で「ダブルボトム」を形成しそうにみえる状況でもあるため、上方向への意識が優勢といえます。

 以上のように、テクニカル分析の視点でみていくと、節目での「リターン・ムーブ」への警戒はあるものの、全体的には株高の余地を感じさせる兆候の方が多い印象となっています。ただし、先週の株高の背景となった材料について整理してみると、順調にことが運ばないかもしれません。

 実際に、先週の株価反発をもたらした材料として、(1)原油価格の下落、(2)株価「下げ過ぎ」の反動と割安感、(3)ウクライナとロシアの停戦交渉への期待、(4)国内新型コロナ規制の緩和、(5)ロシア国債の利払い実施でデフォルト回避、(6)市場寄りと受け止められた中国の経済政策方針、(7)FOMC(米連邦公開市場委員会)を無難に通過したことによるアク抜け感、(8)米国の需給的要因(クアドラプル・ウィッチング)への思惑などが挙げられます。

 多くの材料が重なったことが株価上昇に勢いをつけたわけですが、それと同時に、継続的な株高材料は少なく、ウクライナ情勢が悪化すれば、再び売りに転じる材料もあることにも気付かされます。今週は23日(水)にウクライナのゼレンスキー大統領が国会でオンライン演説を行う予定があるほか、24日(木)にはNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議も開かれる予定です。

 大きな動きがなければ、短期的に「相場は不安の崖を駆け上る」という格言のような動きをみせるかもしれませんが、戦況の悪化と民間人への被害は着実に拡大しているため、事態の長期化懸念は払拭(ふっしょく)されず、中長期的に本格的なリスクオンに転じるにはまだしばらく時間がかかりそうです。