一部の投資信託で、「基準価額」(投信の値段)の算出が事実上停止する、異例の事態が起きています。ロシアの金融市場において株式や債券の売買が成立しない状況となり、基準価額の算出に必要な組入資産の評価を正常に行えていないためです。

 世界各国がロシアに対する経済制裁を強める中、ロシアの株式と債券、そして、通貨ルーブルには取引規制がかかり、投資信託(ファンド)の運用にさまざまな形で影響が及んでいます。今回は、投資信託に関連する最新の動きと注意点について解説します。

 前回の記事はこちら:ロシア投信、解約停止はなぜ?目に見えないリスクに注意

一部投資信託で、基準価額の算出が事実上停止

 一部の投資信託で、「基準価額」(投信の値段)の算出が事実上停止しています。

 楽天証券の取り扱い銘柄では、「アムンディ・ロシア東欧株ファンド」に影響がありました。同銘柄の基準価額は、2022年2月25日時点の組入資産評価額を基に、26日以降はユーロ/円の為替変動だけを反映する形で算出されていました。

 その後、3月11日には、組み入れているロシア株式の評価額をゼロとし、基準価額が大幅に下落しました。

 また、「短期ロシアルーブル債オープン(毎月分配型)」も、同3月10日の基準価額を前日比▲50.44%の397円とし、以降の評価額をゼロとする対応が取られています。

【注意点は?】
 基準価額の算出が事実上停止すると、これまで急落していた基準価額が下げ止まったかのように見えます。しかし、これは正常な組入資産の評価ができないという機能不全の状態であり、歓迎できるものではありません。

 いったん評価額をゼロとしたことで、今後基準価額の算出が再開された際に評価額がゼロから引き上げられる可能性もありますが、現在の水準からどの程度回復するかは未知数です。

 両銘柄とも既に積立を含む設定・解約の申込は停止していますが、基準価額が算出できないと設定・解約の申込も再開できないため、事実上の凍結状態は続きます。

主要指数からロシア株式・債券が除外される

 指数(インデックス)とは、特定の市場全体の値動きを計算して数値化したものです。指数に連動する投資成果を目指す投資信託を、インデックス型投資信託といいます。

 一般的にこの指数は、指数算出会社という会社によって組成・算出されますが、世界の主要な指数算出会社はこの度、それぞれの会社が提供する指数からロシア株式・債券を除外することを発表しました。

 これにより、新興国株式や債券のインデックスに連動する投資信託は、事実上、ロシア株式・債券の組入比率がゼロになります。

【注意点は?】
 主要指数におけるロシア株式・債券の組入比率は決して高くなく、個々のインデックス型投資信託における組入比率も、除外が決定した時点でおおむね1%未満でした。この点について過度に神経をすり減らす必要はないでしょう。

 しかしながら、現実にはロシアの株式や債券を速やかに売却することは難しく、当面は、連動を目指す指数と、実際のファンドの値動きにかい離が生じる可能性が高いとみられます。

 今回のロシアに限ったことではありませんが、アクティブ運用においては独自の判断で組入比率を引き下げることができます。しかし、指数と「運命共同体」のインデックス運用の場合、指数算出会社の判断を待って対応するほかないため、今回のようなことが起こり得るのです。

 現在は、主としてロシア関連の資産を投資対象とする投資信託への影響が中心ですが、市場の混乱状態が続く中、今後、他の資産に影響が及ぶ可能性も考えられます。

 本連載では、今後も継続的に投資信託の最新情報をお届けします。