3月17日(水)のセミナーでは、「ファンダメンタルズ」と「マーケットテーマ」の違いについて話をする予定であるが、現在の為替市場の大きなマーケットテーマは「金利」であり、「出口戦略の行方(主に米・中の金融政策)」である。

現在の金利に敏感な投資環境の下で、3月4日の早朝(夜中の2時)に日経新聞の「日銀は4月に向けて金融緩和策の検討に入った」との報道があったものだから、投機筋はいっせいにドル/円の買いポジションを作った。市場では昨年11月末の日銀金融緩和後にドル/円が大きく上昇したというバイアスが強いため、ニュースの真偽に関係なくマーケットは円安で反応した。ドル/円の88円台には本邦政府系のビッドがあり、外為特会の借り入れ上限も引き上げられたことで、目先、円は買いにくい状況にある。

ドル/円(日足)


(出所:石原順)

世界中の国が“出口”を模索(金融引き締め)している時に、日本だけが“出口”なしの金融緩和に向かっている現状は、投機筋から見れば奇異に映るだろう。本日、3月12日の日経新聞は、「日銀が追加金融緩和策で新型オペの供給額を20兆円に倍増することを軸に協議する」と報道しているが、「20兆円の日銀バブル」を材料に、来週の日銀金融政策決定会合(16~17日)に向けて投機筋の円売りが加速する可能性がある。一方で、日銀金融政策決定会合の内容が失望的であれば、投機筋のドル買いの投げ売りも出るだろう。来週16日の米FOMCとあわせて、来週前半の動きには注意したい。

このような売り方優勢の円相場であるが、日足ベースでみると、現在は円買われすぎの反動による調整局面といえるだろう。ここ数週間の14日ADXや26日標準偏差ボラティリティが示唆しているのは、穏やかな円安基調あるいはボックス圏の乱高下相場である。

豪ドル/円(左)・ユーロ/円(右)の日足

上段:14日ADXと26日標準偏差ボラティリティの推移


(出所:石原順)

ポンド/円(左)・ドル/円(右)の日足

上段:14日ADXと26日標準偏差ボラティリティの推移


(出所:石原順)

豪ドル/円やドル/円は日足ベースでかなり調整(ボラティリティの低下)が進んでいるものの、次の強力なトレンドが発生していない。そのため、今週の1時間ベースのドル/円相場はまったく動かなかった。

ドル/円(1時間足)21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADX


(出所:石原順)

現在のもう一つのマーケットテーマである「ソブリンリスク」をテーマにした相場は、第123回のレポート「ギリシャの次はスペインか? 英国か? だがテクニカルは…」で述べたように、とりあえずは飽きられたようだ。

ギリシャ危機に始まる今回の大がかりなユーロ売りは、(ドルとポンドの防衛のために)陰謀術や風説の流布に長けたロンドン勢を中心とする英米の国際資本筋が仕掛けたと言われている。本日、報道されている「弱いユーロを支持せず」というサルコジ仏大統領のコメントは、英米の資本筋への意趣返し(仕返しをして恨みを晴らすという)だ。そう、為替は政治なのである…。

ユーロ/ドル(日足) 14日ADXの推移 現在方向性はない


(出所:楽天証券マーケットスピード)