欧州PIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)諸国を巡る負の連鎖が続き、ユーロ安相場が続いている。1月21日のオンラインセミナー「2010年の為替相場展望と投資戦略」や1月29日のレポート「通貨ファンドが注目するユーロ/ドルの20カ月移動平均線」で述べたように、ユーロ/ドルは20カ月移動平均線を割り込んだことで弱気相場に転換し、現在4年サイクルの底を模索中である。シカゴ市場界隈では投機筋の最終ターゲット(長期ターゲットで目先ではない)価格として、ユーロ/ドルの1.24、ユーロ/円の112円が話題となっている。

ユーロ/ドル(月足)20カ月移動平均線とフィボナッチのリトレースメント


(出所:石原順)

そのような価格が実現するかどうか、筆者はわからないが、目先の相場はユーロの下げエネルギーが衰退している。相場の変動率の大きさや方向性を示唆する26日標準偏差ボラティリティ(STD26)や14日ADX(ADX14)は現在ピークアウトしており、日足もボリンジャーバンドの2σにタッチすることなく推移していることから、ここからの相場は大きなボックス圏で乱高下する確率が高くなる。もう一段下げるにしても、いったんは値幅か日柄の調整が必要な踊り場の局面だ。(チャートAのシナリオ)

一方で、現在のユーロ相場は負の連鎖相場になっていることから、突発的な悪材料が出やすい環境にある。その場合、可能性は低いものの、ボラティリティ(変動率)が高い位置から再上昇する可能性があり、オプション市場の損切りも巻き込んだユーロ売りが継続する可能性も残されている。(チャートBのシナリオ)

ユーロ/ドル(日足)14日ADXと26日標準偏差ボラティリティ


(出所:石原順)

昨日のセミナーで紹介した9日のRSIやDYNAMIC MOMENTUM INDEXは、価格との逆行(ダイバージェンス)状態(ユーロ/ドルの日足)となっており、ユーロのリバウンドにも注意が必要な状況にある。

ユーロ/ドル(日足)9日のRSIとDYNAMIC MOMENTUM INDEX は逆行状態

2σにタッチしながら下げるバンドウォーク(強いトレンド=黄色の部分)


(出所:石原順)

また、ユーロドルは90日移動平均線の-5%を超えるところまで下げており、いったんは投機筋の目標達成の水準といえよう。

ユーロ/ドル(日足)90日移動平均線の±5%乖離と200日移動平均線の10%乖離


(出所:石原順)

1時間足もランダムな動きとなっており、今週は大きなトレンドが出ていない。

ユーロ/ドル(1時間足)21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADX


(出所:石原順)

要するに、ユーロを中心に動いている外為相場は、現在、売るのも買うのもこわい状況で、「トレードの勝率が高い局面ではない」ということだ。円絡みでは、本日の東京市場では月末で本邦輸出企業のドル売りが出る可能性があるほか、3月決算がらみのリパトリ観測もあり、一段の円高には注意が必要といえよう。だが、日足ベースのトレンド指標には相場の方向性を示唆するものがないので、筆者は「休むも相場」を決め込んでいる。この局面のトレードは1時間足での短期売買に留めたい。

ユーロ/円(日足)14日ADXと26日標準偏差ボラティリティ

おいしいところ(勝率の高い局面)はいったん終わり…?


(出所:石原順)