インフレ高進はグロース株に逆風、バリュー株に追い風

 米国でインフレ率(CPI総合指数前年比上昇率)が1月時点で7.5%まで上昇し、FRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派色を強めていることが、米国株にとって弱材料となっています。高インフレが長期化すると、米長期金利がさらに上昇し、株式から債券へ資金の逆流が起こる可能性があるからです。特にGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)などPER(株価収益率)でやや高めの評価をされている米大型ハイテク株にネガティブと考えられています。

 ただし、インフレそのものは決して企業業績・株式市場にとってマイナスではありません。特にオールド産業の景気敏感株にとって、復活につながる面もあります。私が3大割安株として注目してきた、金融株・資源関連株・製造業にとって追い風となっています。

 実際2022年に入って、以下の通り、日本でバリュー上昇、グロース下落の極端な二極化が起こっています。日本だけでなく世界中でバリュー買い・グロース売りが加速しています。

バリューとグロースで二極化:2022年の年初来騰落率(2月15日まで)

景気敏感バリュー株

コード 銘柄名 上昇率
5713 住友金属鉱山 +28.0%
1605 INPEX +17.6%
8306 三菱UFJ FG +17.5%
8058 三菱商事 +8.5%
7203 トヨタ自動車 +2.3%


値がさグロース株

コード 銘柄名 下落率
9984 ソフトバンクG ▲5.1%
8035 東京エレクトロン ▲16.7%
4568 第一三共 ▲18.6%
6098 リクルートHD ▲27.6%
4385 メルカリ ▲39.9%


株価指数

銘 柄 騰落率
東証バリュー指数 +2.7%
TOPIX ▲3.9%
日経平均 ▲6.7%
東証グロース指数 ▲10.3%
東証マザーズ指数 ▲26.5%
出所:QUICKより作成


  日本が得意とする製造業は、オールド産業として世界の株式投資で「好業績でも無視」されてきました。世界中で製造業が過剰な生産能力を持ち、モノが余り、モノの値段がすぐに下がってしまうことが、製造業の価値を貶めてきました。今、起こっていることは、その逆回転です。米国で消費が拡大する中、モノが足りずモノの値段が上がっていることが、米国の高インフレにつながっています。そのインフレが長期化するということは、世界の製造業にとって「干天の慈雨」です。

 金融株も同じです。三菱UFJ FGは世界で金利が低下するたびに売られてきましたが、あしもとインフレ高進にともなって長期金利が上昇していることを好感して、株価の上昇率が高くなっています。