10-12月決算は好調だったが、日経平均は下落

 15日の日経平均株価は、前日比214円安の2万6,865円と、再び2万7,000円を割れました。日経平均は昨年おおむね2万7,000円~3万700円のボックス圏で推移していましたが、その下限を割り込んだ状態です。

NYダウと日経平均の推移:2020年末~2022年2月15日(NYダウは14日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 10-12月決算が出そろいました。企業業績好調が続いていることが確認できましたが、それと逆行する形で日経平均は下げ続けています。

【1】米インフレ高進を受けてFRBが金融引き締めを急いでいること
【2】ウクライナ情勢緊迫化


 を受けて、米国株が売られ、つれて日本株も外国人投資家と思われる売りによって下落が続いています。

インフレ高進はグロース株に逆風、バリュー株に追い風

 米国でインフレ率(CPI総合指数前年比上昇率)が1月時点で7.5%まで上昇し、FRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派色を強めていることが、米国株にとって弱材料となっています。高インフレが長期化すると、米長期金利がさらに上昇し、株式から債券へ資金の逆流が起こる可能性があるからです。特にGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)などPER(株価収益率)でやや高めの評価をされている米大型ハイテク株にネガティブと考えられています。

 ただし、インフレそのものは決して企業業績・株式市場にとってマイナスではありません。特にオールド産業の景気敏感株にとって、復活につながる面もあります。私が3大割安株として注目してきた、金融株・資源関連株・製造業にとって追い風となっています。

 実際2022年に入って、以下の通り、日本でバリュー上昇、グロース下落の極端な二極化が起こっています。日本だけでなく世界中でバリュー買い・グロース売りが加速しています。

バリューとグロースで二極化:2022年の年初来騰落率(2月15日まで)

景気敏感バリュー株

コード 銘柄名 上昇率
5713 住友金属鉱山 +28.0%
1605 INPEX +17.6%
8306 三菱UFJ FG +17.5%
8058 三菱商事 +8.5%
7203 トヨタ自動車 +2.3%


値がさグロース株

コード 銘柄名 下落率
9984 ソフトバンクG ▲5.1%
8035 東京エレクトロン ▲16.7%
4568 第一三共 ▲18.6%
6098 リクルートHD ▲27.6%
4385 メルカリ ▲39.9%


株価指数

銘 柄 騰落率
東証バリュー指数 +2.7%
TOPIX ▲3.9%
日経平均 ▲6.7%
東証グロース指数 ▲10.3%
東証マザーズ指数 ▲26.5%
出所:QUICKより作成


  日本が得意とする製造業は、オールド産業として世界の株式投資で「好業績でも無視」されてきました。世界中で製造業が過剰な生産能力を持ち、モノが余り、モノの値段がすぐに下がってしまうことが、製造業の価値を貶めてきました。今、起こっていることは、その逆回転です。米国で消費が拡大する中、モノが足りずモノの値段が上がっていることが、米国の高インフレにつながっています。そのインフレが長期化するということは、世界の製造業にとって「干天の慈雨」です。

 金融株も同じです。三菱UFJ FGは世界で金利が低下するたびに売られてきましたが、あしもとインフレ高進にともなって長期金利が上昇していることを好感して、株価の上昇率が高くなっています。

日本企業の業績回復を見直す流れは遅れてやってくると予想

 10-12月決算の発表が終わり、想定通りの好決算だったのに日本株が下落しているため、日本株はPERから見て割安となってきています。東証株価指数の予想PERは15日時点で14.5倍まで低下しており、今後業績が急激に悪化していくことがなければ、いずれ好業績を見直す買いが入ると予想しています。その時をじっくり待ちたいと思います。

 以下、参考までに、東証一部3月決算主要841社の業績推移をご覧ください。

東証一部上場3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比)

出所:各社決算資料等から集計。期初予想は5月時点の発表。実績は最終着地。2022年3月期純利益の会社予想を公表していないソフトバンクGについては楽天証券予想5,000億円を使用、ソフトバンクGを除く840社で計算すると、2022年3月期純利益は62.2%の増益予想となる。楽天証券経済研究所が作成

 3月期決算主要841社の2018年3月期実績から2022年3月期(会社予想)までが掲載されています。各年度の期初会社予想と、実績(最終着地)を比較してご覧ください。期初→実績が増額修正となっている年度は日経平均が上昇、期初→実績が減額修正となっている年度は日経平均が下落する傾向が強いことが分かります。

 今期(2022年3月期)は、期初(2021年5月時点)会社予想が19.1%の増益でしたが、10-12月期決算の発表まで終わった2月15日時点では、34.3%増益に増額修正されています。ところが、日経平均は前年度末(2021年3月末)対比で7.9%下落しています。今後、利益予想の減額修正が急速に増えない限り、日本株はいずれ業績を見直した買いが入ると予想しています。

 現時点でのメインシナリオでは、年後半、業績相場に転換して日経平均は再度、上値を試すと予想しています。

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