米中金融政策の違い

 2月4日から20日の日程で北京冬季オリンピック、3月4日から13日の日程でパラリンピックが開催されます。米中関係が緊迫化する中、大きな国際大会で新型コロナを流行させてしまうようなことにでもなれば、米国は中国を厳しく批判し、中国は国際的な信用を大きく落としかねません。

 昨年の東京夏季オリンピックは真夏の暑い時期に開催されましたが、今回の北京冬季オリンピックは気温が低く、感染症が流行しやすい真冬の開催となります。今年はラニーニャ現象による影響で厳冬が予想される中、中国は徹底したゼロコロナ政策を実施しています。当然、経済、特に消費に対する影響は免れず、これが景気の下押し要因の一つとなっています。

 一方で、タイミングの悪いことに、習近平政権は庶民目線の政策、つまり、格差の拡大であるとか、不公平、不正の是正といった市場経済による副作用の部分を正すような政策を打ち出しています。

 それが独占禁止法に違反したり、教育政策、人口対策を阻害したりしている企業や、一部の行き過ぎた不動産業者への粛清につながっています。こうした政策はどうしても景気に対してはマイナスの方向に作用してしまいます。

 昨年の四半期ベースの経済成長率を順に示せば18.3%、7.9%、4.9%、4.0%で、成長率は鈍化傾向となっています。

 通年で、できれば5.5%程度の成長を目指したいであろう国務院としては、前年の反動が出ているとはいえ第4四半期の4.0%という成長率では低すぎます。ですから、景気を下支えしたいのでしょうが、それを金融緩和政策でもって対処しようとしています。

 中国人民銀行は12月、1月と続けて1年物最優遇貸出金利を引き下げており、5年物についても1月は小幅ながら引き下げています。

 国務院はよほどのことがない限り、習近平政権が大方針として示している長期計画を修正することはないでしょう。財政政策については少し強化するかもしれませんが、まずは金融政策がマクロコントロール政策の中心となるはずです。今後も金融緩和政策が継続しそうだということです。

 一方、米国ではインフレが顕著となってきました。それを抑えるためにFRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和のテーパリング、さらには利上げへと進む方針を明らかにしています。インフレの原因が需要が強すぎることによるディマンドプルならまだよいのですが、原油価格、素材価格の上昇など、供給側の要因によるコストプッシュであるとすれば少々厄介です。

 欧米の機関投資家の中には中国経済について、一部の不動産企業のデフォルトにより混乱するのではないかと予想したところもあったようですが、中国当局の用意周到な対策もあってそうしたリスクを警戒する向きは少なくなっています。金融政策の違いに着目した資金移動はしばらく続くと見ています。

 本土についてですが、主要投資家は依然として個人投資家、あるいは個人投資家の資金で組成されるファンドなどであり、彼らは政策に対して強く反応するといった傾向があります。1月31日から2月6日にかけて春節休暇となり、その後は先ほど示したように北京オリンピック、パラリンピックが続きます。物色が進むような材料が頻繁に出てくるような状況ではありません。

 投資家の投資意欲は今一つといった状態がしばらく続きそうです。