益利回りスプレッドでチェックする米国株のバリュエーション
米国株式が調整モードにある場合、どのような投資戦略で対応することが妥当でしょうか。図表4は、米国市場を分析するバリュエーション手法として知られる「益利回りスプレッド」(債券利回り-株式益利回り)で過去約30年にわたる株価の相対的な水準を振り返ったものです。
「株式益利回り」とは、予想PER(株価収益率)の逆数で、株価に対する予想EPSの利回り(12カ月先予想1株当たり利益÷S&P500指数)を示します。長期金利(10年国債利回り)と株式益利回りの差(=益利回りスプレッド)を試算し、その相対的な高低で「債券と比較して株式が割高」なのか「債券と比較して株式が割安なのか」を分析します。
このモデルでは、益利回りスプレッドが高いほど「株式が債券と比較して割高」と判断され、同スプレッドが低いほど「割安」と推定されます。最近までの株高を「2000年初のITバブル崩壊直前と同様」とみる弱気論があります。
ただ、当時のS&P500種指数の予想PERは約25.5倍に拡大し、長期金利は6.7%まで上昇していました。当時の益利回りスプレッドは最大で+2.8%まで拡大し「株式が債券と比較して割高」だった経緯を示します。
一方、現在の予想PERは約21倍(株式益利回りは約4.7%)で、長期金利は約1.7%台で推移しています。したがって、益利回りスプレッドは▲3.0%です(1月12日)。
過去約30年の益利回りスプレッドの算術平均(▲2.2%)と比較すると、「債券と比較して株式は割高(非合理)」とは言えない状況です。景気拡大で企業業績が拡大傾向を続けるなら、株価に上昇余地が見込めそうです。
こうした観点で、1月中旬に発表が本格化する主要企業の第4Q(10-12月期)決算とガイダンス(業績見通し)が注目されます。金融政策を巡る思惑で株価が下落する場面は、中長期の視野に立った投資姿勢や押し目買いに分があると考えています。
<図表4:「益利回りスプレッド」でチェックする米国株式の水準感>
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