過去のドル/円相場は概ね、米国の金利上昇サイクルの後半と金利低下サイクルの前半がドル買いの投資タイミングとなっている。これをもう少し詳細にみると下のチャートの(1)が金利上昇サイクルの前半、(2)が金利上昇サイクルの後半、(3)が金利低下サイクルの前半、(4)が金利低下サイクルの後半で、ドルが上昇している局面は(2)の金利上昇サイクルの後半と(3)の金利低下サイクルの前半である。

ドル/円相場と金利循環


(出所:石原順、ブルームバーグ)

さて、我々が現在みているドル/円相場は(4)の金利低下サイクルの後半という循環のなかにある。したがって過去の経験則からみると相場の大局観はドル安である。(4)の金利低下サイクルの後半のあとには(1)の金利上昇サイクルの前半が到来するが、この(1)の時期はドルの急落をみることが多い。ドル/円相場の大底はこの(1)の時期(2010~2012年あたりか・・)までつけないのではないかと筆者は考えている。

(3)の金利低下サイクルの前半と(4)の金利低下サイクルの後半になぜドルが上がっているのかというと、米国の金利が他国に対して相対的に高い時期だからである。それ以外の理由はない。

為替の教科書では、実質金利(インフレ率を引いたもの)の動向によってドル/円相場が動いているという解説をよく見かける。筆者はスタグフレーション(不景気下の物価高)のような悪性インフレ期であっても、名目金利さえ上がればドルは上昇するとみている。それはスタグフレーションで米国の短期金利が 20%を記録した米国の大不況期である1980年代の名目金利とドルの動きをみれば明らかであろう。

結局、米国の金利が他国に比べて相対的に低いときは、ドルは上がりにくいということである。向こう1~3年のドル/円相場を考える上で、上記のポイントはきっちり押さえておきたい。

2009年のドル/円相場は、オバマ政権への期待感とドル高・株高という1月の季節要因からくるバイアスでドル高スタートとなったが、早くも暗雲が垂れ込めてきている。筆者の周辺では「戎(えびす)天井だ」と弱気の声が多いが、現在のドルや株の押し目(下落の)の度合いが浅ければ、調整後、もう一段の上昇相場があるのではないかと思われる。ドル/円でいえば1ドル=90円をキープできるか否かがポイントとなるだろう。少なくともオバマ大統領就任の1 月20日、あるいは節分天井くらいまで株もドルもリバウンドしてくれないと、相場の先が読みにくくなる。

過去10年間のドル/円の1月相場はドルが7勝3敗


(出所:石原順、ブルームバーグ)

昨日、オバマ次期米大統領がジョージメイソン大学での講演で「景気対策への支持」を訴えたが、相場への反応は特になくオバマ政権への御祝儀および期待相場は一旦終了したと思われる。ここからはまた悪さ比べの相場が続くだろう。米国のクリスマス商戦は結局低調に終わった。米国の企業業績の回復(底打ち)には、なお6~8四半期を要するといわれている。だが、経済のファンダメンタルズが最も悪化している英国のポンドが現在リバウンドしているように、相場は循環である。大局観をベースに短期的な実践相場では柔軟に対処していきたい。

ユーロ/ポンド(日足)ポンドの売られすぎの反動相場


(出所:石原順、ブルームバーグ)

現在、外為市場は通貨ペアによって整合性のないバラバラの動きとなっており、ポジション調整的な動きが主流となっている。筆者は相場の軸足をユーロ/ドルに移している。フィボナッチのチャートポイントを節目とした逆張りが機能しており、日足で見る限りクロス円相場よりわかりやすい動きとなっている。楽天 FXのチャートで【フィボナッチのインディケーター】が用意されているので、ぜひ使っていただきたい。

フィボナッチのカスタマイズ設定


(出所:楽天証券 楽天FXチャート)

ユーロ/ドル(日足) フィボナッチによる支持線・抵抗線


(出所:楽天証券 楽天FXチャート)

ユーロ/ドル(日足)と支持線・抵抗線


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円およびクロス円相場は、1カ月の市場参加者のコストである21日移動平均線に値段が接近しており(いわゆる相場の真ん中)、ここからの方向性が読みにくい。現在の相場は、【1時間足】などの短期売買のほうが対処しやすいだろう。筆者は短期売買では【1時間足】を使っている。移動平均線に傾きがあるのを確認して、ボリンジャーバンドの&1sigma;の外側でのみ取引している。

ドル/円(1時間足)と21時間ボリンジャーバンド1σのブレイク


(出所:石原順、楽天証券)

豪ドル/円(1時間足)と21時間ボリンジャーバンド1σのブレイク


(出所:石原順、楽天証券)

(この売買手法については2008年9月26日のレポートで解説しているので、そちらを参照してください)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年1月8日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。筆者はデイトレードおよびスウィングトレードでも緑の期間は円売り、黄色の期間は円買いを中心にしている。2008年相場ではうまく機能したが、我々は現在長期円高サイクルの最終波動のなかにいるのである。当面は円高バイアスがかかり続けるので過信は禁物である。また、過去にはATR上昇で円安、ATR下落で円高となった局面も多いので注意されたい。

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)