2022~2023年の道筋

 目線を大局的に2022年、さらに2023年まで延ばしてみましょう。

 米株式市場は、2020~2021年に大金融相場を享受し、やがて劇的な企業収益の改善で業績相場も重なる展開でした。今後は、FRBがインフレ・ファイターとして、金融緩和解除から金融引き締めへと向かう公算です。おのずと金融相場は弱まり、業績相場へ軸足を移していく流れです。

 2022年はこの移行プロセスと位置づけられますが、インフレ動向に不確実性が続くため、FRBの政策見通しも揺れ動き、株式相場も折々に不安定化する恐れがあります。

 市場は本稿執筆時点で、2022年中の利上げについて、5月ないし6月に始まり、これと合わせて2.5回(つまり2回予想派と3回予想派に2分)と織り込んでいます。

 株式相場は、これが2回になれば好感し、3回以上になれば動揺する、そんな振れ方を度々見せるでしょう。

 2022年には、インフレ、金利、株価の相克展開という1980年代、1990年代によく見た、ヒリヒリと神経質な相場を久々に味わうことになるかもしれません。

 もっとも、株式相場が揺れ動き、金利上昇に圧迫されても、金融相場だけで終わるわけではなく、順当には業績相場へと連なります。2022年は、金融緩和解除から利上げが進行する引き締め初期段階までの神経質な移行期という位置づけです。ここで一時的インフレ項目に沈静の兆しが見えるなど、インフレ全般の高進リスクが和らげば、FRBは来たる利上げステップについて、市場との対話が可能になります。株式相場は利上げの道筋を織り込めれば、いたずらに動揺する場面は減り、業績相場を追求しやすくなるでしょう。

 結論として、2022年を通して、さらに2023年へ、大局は金融相場から業績相場へ上方サイクルは継続するとの見立ては変わりません。米長短金利が景気中立水準と見込まれる2.5%に接近するまでは、中長期投資はホールド継続が基本スタンスです。

 ただし、米株式相場はWショックからの復調を果たしても、数カ月はインフレ動向の不確実性から不安定さを残し、FRBの利上げスタンス、債券金利の動きに神経質と判断します。米利上げ開始に前後する金融・業績相場間の移行期である2022年は、株式相場全体のパフォーマンスが、2020年、2021年より低くなると見るのが妥当でしょう。それだけに、新規参入の投資は、短期投資として処置する必要が生じるかもしれないことをあらかじめ意識し、短期的に揺れ動く相場の下振れ場面を有効に活用する構えが重要であろうと予想します。

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