NISA口座で買ったがために売るべきタイミングで売れない?

 筆者は、NISAは「何年もの間、買った株をずっと持ち続ける」という前提、そして「何年もの間ずっと持ち続けていれば、買った値段より株価が上がる可能性が高いだろう」という前提のもと作られている制度だと思っています。

 でも実際には、何年持ち続けても株価が上昇するどころか大きく下落する銘柄も少なくありません。

 そして、「損失の状態で売っても他の株の利益と相殺できない」、「もし持ち続けて株価が上昇すれば、利益は非課税となる」という点を意識しすぎて適切なタイミングで売却・損切りしないことにより、損失がさらに膨らんでしまうというリスクをはらんでいるのです。

 たとえば、筆者が用いているルールである、「保有株の株価が25日移動平均線を割り込んだら売却する」という前提で考えてみましょう。

 普段はこのルール通りに売却できているとしても、NISA口座で買った株については、25日移動平均線を割り込んでも「そのまま持ち続けよう」という意識が働く恐れがあります。

 NISA口座で買った株を売却してしまえば税優遇のメリットがなくなってしまうからです。

 ここでよく考えていただきたいことがあります。

 同じA社株式を、NISA口座以外で買ったならば25日移動平均線を割り込んだら売却できるが、NISA口座で買ったら税優遇のメリットを失うことを恐れて25日移動平均線を割り込んでも売却しない…。

 この行動は、非常に矛盾していると思いませんか?

 同じA社株式を売買しているのだから、NISA口座で買おうが、NISA口座以外で買おうが、売却のタイミングは同じにならなければおかしいはずです。

 それなのに、NISAの持つ税優遇により、投資戦略がゆがめられてしまっているのです。これこそが、NISA口座で買った株について大いに気を付けるべき点だと筆者は思っています。

「長期的に保有できる銘柄へ投資しましょう」のアドバイスは正しいのか?

 FP(ファイナンシャルプランナー)の方や専門家・評論家の方は、「NISAは長期的に保有することができるような銘柄へ投資しましょう」とよく口にします。NISAは長期保有が前提なので、長期保有することで恩恵を受けられる銘柄を選ぶことが求められているからです。

 これを聞くと、一瞬「なるほど」と思ってしまうかもしれませんが、そもそも長期的に保有することができるような銘柄を、私たち個人投資家が正確に見分けることができるのでしょうか?

 一般的には、将来の高い成長が見込まれる好業績銘柄や、高配当を受け取れる銘柄ということになるかと思います。

 でも、高成長を見込んでいたつもりが実際は業績が伸び悩んで株価が急落したり、配当金が減額されて株価も大きく下がったり…ということがよく起こります。

 こうした銘柄を何年も保有し続けた結果、利益どころか多額の含み損を抱えてしまう、というケースも大いに想定しなければならないのです。

 では、筆者はNISAを活用していないのかといえば、そんなことはありません。毎年NISAの非課税枠いっぱいを使って個別銘柄やETF(上場投資信託)などに投資しています。

 ただ、筆者は投資する銘柄の選び方や、投資した後の対応にひと工夫しています。その内容については、次回のコラムにてお話しします。