焦点は「歴史決議」。習近平が勝負に出る

 最大の焦点は、「党の100年にわたる奮闘の重大な成果と歴史経験に関する決議(歴史決議)」を採択することです。過去に採択された「歴史決議」は二つあります。

 一つ目は、1945年の第6期7中全会で採択された「若干の歴史問題に関する決議」。「整風運動」を背景に党の進路や政策に関する誤りを総括し、一部党幹部に反省を要求したことによって、毛沢東(マオー・ザードン)は最高指導者としての歴史的地位を確立しました。

 そして二つ目は、1981年の第11期6中全会で採択された「建国以来の若干の歴史問題に関する決議」。文化大革命の弊害と後遺症を総括することで、鄧小平(ダン・シャオピン)は最高指導者としての歴史的地位を確立したのです。

 同じく習総書記が「歴史決議」の採択を通じ、毛、鄧両氏の次にあたる「第3世代指導者」という歴史的地位を確立しようとしている最大の根拠は、この二人の指導者の経緯であると思われます。

 ところで、「第3世代」という言葉に違和感を持たれる方もいると察します。過去の総書記だった江沢民(ジャン・ザーミン)が「第3世代」、胡錦涛(フー・ジンタオ)が「第4世代」の指導者であり、習近平は「第5世代」に当たるのではないかという疑問です。実際、習近平を「第5世代指導者」だと位置づける見方や議論もあります。

 マニアックすぎる説明は割愛(かつあい)するとして、結論を言えば、江、胡両氏は、真の意味で「第X世代指導者」には含まれません。

 習総書記とて、江、胡両氏の功績を否定するわけではありません。実際に、あらゆる政治会議で、両氏の功績を称(たた)えてきました。ただ、中国共産党、中国の発展の歴史という大きな視点と枠組みで捉えた場合、実質的には「第3世代」なのです。

 10月18日、中央政治局会議が発表した次の部分を見てみましょう。

「中国共産党と中国人民は英勇、頑強な奮闘で世界に厳かに宣告した。中華民族は『立ち上がる、富む』から、『強くなる』への偉大な飛躍を迎えていることを。中華民族の偉大なる復興は不可逆的な歴史の発展過程に突入していくことを」

 私から見て、習総書記率いる中国共産党指導部が、真の意味での最高指導者は、中国の歴史の中で3人(3世代)しかいないと政治的に定義する状況証拠が、まさにこの部分なのです。

「立ち上がる」(毛沢東)、「富む」(鄧小平)を引き継ぐ形で、「強くなる」ことが中国共産党、中国の歩みであり展望なのです。それがアヘン戦争以来、屈辱を受け続けてきた中華民族(=中国人民)にとって最後のピースを埋めることであり、習近平の歴史的任務だという位置づけ、目標設定なのです。

 毛沢東、鄧小平に次ぐ「第3世代」の指導者として、歴史的地位を政治的に確立すること。これこそが、習総書記が中国共産党百周年という節目の年に「歴史決議」の採択を試みるマクロ的動機といえますが、ミクロ的動機もあるのです。

 それは、第3期目への挑戦であり、最高指導者として2期10年を終える2022年秋第20回党大会以降の続投です。

 習総書記はすでに憲法改正を通じて国家主席の任期を撤廃しているため、「終身指導者」になることは制度的には可能です。

 一方で、党内外には、依然としてそれに反対する声や勢力が存在する。習総書記はいまでも「見えない政敵」と常に戦っている。2022年秋以降の続投を現実的に可能にするためには反対勢力を黙らせ、権力基盤の完全強化を狙う。そのために党百周年という最高のタイミングに「歴史決議」を採択するのです。