コメント3:原子力発電で電気自動車を動かすとどうか

【いただいたご意見】

 確かに、行き過ぎているのかもしれませんが、電力は、化石燃料だけでなく原子力もありますから、ガソリンよりは電気自動車のほうがCo2排出が少ないということ言えると思います。

 私が「テスラを環境企業として評価するのはおかしい」と述べたことに対するコメントをいただきました。

 まず、私の意見を説明します。テスラは電気自動車を作っていて、電気自動車はCO2を排出しません。だから環境を悪化させない企業として高く評価されています。ただし、現在、世界の発電の大部分が化石燃料(天然ガスと石炭)を使って行われています。

 つまり、テスラは化石燃料を使って作った電気で自動車を動かしていることになります。したがって現時点では環境貢献企業として100点満点では評価できないと考えています。

 何十年か先に、人類が使用する電気の大部分を自然エネルギーで発電するようになれば、その暁には電気で自動車を動かすテスラは100%環境貢献企業と言えるようになると思います。以上が私の意見です。

 それに対し、電力は原子力からも作れるので、CO2を出さない原子力で作った電気で、電気自動車を動かせば完全な環境貢献企業になると、ご意見をいただきました。

 私は、その意見には賛成しません。原子力発電はきわめてコストの高い発電で、経済合理性がないと考えているからです。安全対策コストに加え、使用済み核燃料を何万年も保管する場所が確保されていない問題があります。

 現在、経済産業省は「核燃料リサイクル事業」が成立することを前提に原発は低コストとしています。しかし、核燃料リサイクルを実現するために必要な高速増殖炉はまったく稼働のメドがありません。核燃料リサイクル事業は実現不可能と世界で見られ、ほとんどの国が断念しています。

 小型原発を動かすことが現在、検討されています。小型原発にすれば、安全対策コストは低下しますが、それでも使用済み核燃料の問題は未解決のままとなります。詳しくは、明日のレポートで解説します。

 仮に原子力発電が有望で、原子力発電と自然エネルギーだけで人類が必要なエネルギーを大部分まかなうことを目指すとしても、それでもガス火力発電の重要性は変わりません。

 もし、原発と自然エネルギーだけで電力を供給すると、どういうことが起こるでしょうか。原発+自然エネルギーだけで電気を供給すると、電力需給が機動的に調整できず、大規模停電や無駄に電気を大量に捨てる問題が起こります。

 電源(発電の手段)には、ベース電源と調整電源があります。

 ベース電源とは機動的な出力調整ができず、24時間、同じ出力の発電を続ける電源のことです。石炭火力・原子力・地熱発電などは、機動的に出力調整ができないので、ベース電源にしかなりません。したがって、急な電力需要の増加や減少に対応できません。

 自然エネルギー発電は、さらにやっかいです。急に出力が増したり、減ったりします。電気は大規模な保存ができないので、供給と需要を常に一致させる「同時同量」が求められます。そのためには変動する電力需要と、自然エネルギーの出力変動に合わせて出力を機動的に調整する「調整電源」が必要です。

 機動的に出力を調整できる電源は、現時点でガス火力しかありません。今後、三菱商事が行っているLNG事業の価値は、その意味でどんどん高くなっていくと予想しています。