エクステンションへの構えを

 これに対して、コロナ禍では、経済が突然封鎖され、超ド級の金融・財政政策で下支えし、やがてワクチン開発から接種が進み、経済正常化を展望しながらなお、超金融緩和継続、ダメ押し的な財政出動による景気の強引な押し上げという流れになっています。株式市場も、超ド級の金融相場に、超ド級の業績相場がオーバーラップする様相になりました。だからトレンドは強いという評価と、だから第4波にもなると行き過ぎを警戒すべきという見方と、どちらか決め打ちできるものではありません。

 しかし、足元の相場回復があまりに早く、10月前半の先行き不安を忘れたかのように、楽観に走ることには慎重です。

 先行きについて、金融緩和解除の前倒し、長短金利上昇の予想は次第に強まる方向でしょう。金利上昇ペースも以下の諸事情で容易に変わるでしょう。インフレが過渡的か、経済は多くのミスマッチにつまずきながらも順当に正常化できるか、エネルギー・資源高は制約にならないか、さらに言えば、米財政政策は継続されるか、債務の重しが顕在化しないか、コロナへの集団免疫期待が崩れないか、などなど、これらはどれも、市場がすぐに解答を見いだせるものではないでしょう。この不確実性下を進む第4波の相場がオーバーシュートするなら、それに応じて反落リスクへの警戒も募るはず。相場の軌道が低ければ、失望から不安がもたげてくることが想像されます。

 したがって、筆者は当面の相場をエクステンションとする「慎重な楽観」に立って、流れに乗る構えです。

 中長期投資なら、エクステンション反転リスクを折々計算しながら、第1波など低価格購入のお宝ポジションを保持して様子見です。新規参入なら、短期投資になるかもしれない可能性を踏まえて、売買の機動性を損なわないポジショニングを勧めます。

 もっとも、エクステンションの調整で相場が終わるとは見ていません。相場が大急落となれば、政策対応も変わります。何より、デジタル技術革新とともに、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナへ経済社会は構造転換の途上にあります。第1波、第2波、第3波とテーマを変えながら進んだ株式相場は、今まさに金利上昇、インフレ、エネルギー高を踏まえた新テーマへのシフトの胎動も窺(うかが)われます。特に候補となるテーマのうち、11月にかけて相場のミニ調整場面で強さを見せる銘柄を注視しましょう。

 何にしても相場が上がるのはハッピーですが、浮かれすぎることなく、引き際と長居を両にらみで緊張を楽しむステージと心しています。

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