平時と異なる経済・市場の軌道

 相場の波動パターンの評価方法として、1980年代後半ごろから、エリオット波動が広く知られています。図2のように、相場はトレンドに沿って3波上昇と2波下降を1波動とする階層構造になっていると考えます。

図2:エリオット波動とエクステンション

出所:各種資料より田中泰輔リサーチ

 筆者は、エリオット波動の信奉者ではありません。しかし、相場が短期でも中期でも長期でも、基本的に波動メカニズムとして分析しています。大相場も永遠には続かず、景気・金利サイクルに沿って3波も上昇すると、そろそろ煮詰まって終わるかもしれないという力学評価を意識しています。

 米株式相場がここからさらに上昇すると、第4波入りと判断されます。エリオット波動では、通常3波の昇波上昇が第4、第5と繰り返される展開を「エクステンション(延長)」と呼びます。それは特大相場の力強さの表れと診断される一方、相場過熱のリスクと評価される明暗両面があります。

 今回、診断の難しさは、コロナ禍の経済の軌道が景気のサイクルと大きく異なるところにあります。通常の景気サイクルは、悪化局面に「生産過剰⇒意図せざる在庫増⇒生産調整⇒雇用調整」と進み、やがて「金融・財政政策発動⇒建設回復⇒株価反発⇒意図した在庫増⇒生産増⇒残業増、雇用、賃金増⇒消費増」と回復局面入り、そして金融引き締め転換という流れが基本です。

 これに沿って、株式市場も、金融相場が、金融引き締めを契機に一時調整、そして景気拡大とともに業績相場という序列で推移するのが基本パターンです。