自民党マル秘、当落予想の中身

 一方、自民党は公示直前の15日から17日にかけて今年4回目の独自調査を実施した模様です。有力な対抗候補者との支持率の差を、A(15ポイント以上)からD(マイナス15ポイント未満)までの10段階に分けて優劣を判定しています。

 詳細を紹介するのは控えますが、一部で出回った同党作成とされる資料では、東京都の25小選挙区のうち前回(10月7~10日調査)と比較可能なのは22選挙区あり、このうち評価「アップ」と「ダウン」がともに8選挙区で、「変わらず」が6選挙区でした。

 あちらが立てばこちらが立たず、の状況です。冒頭で紹介した甘利幹事長らによる「急告」で、「多くの候補者が当落を争う極めて緊迫した状況」とした通りです。

 岸田文雄首相は10月16日早朝の新幹線で岩手県へ向かい、同県と宮城、福島県を回って翌17日夕方に東京へ戻っています。19日にも岸田氏は再び福島市を訪れ、公示後の第一声となる街頭演説に臨みました。

 大票田の都市部や接戦区のテコ入れではなく、東日本大震災の被災地を巡り、住民と向き合う姿勢に、野党陣営も感心したそうです。

岸田首相は「長老支配」脱却を意識?

 その一方、岸田氏がほぼ連日、日によっては1日に複数回、顔を合わせている人物がいます。自民党選挙対策委員長の遠藤利明氏です。

 遠藤氏は自民党総裁選で岸田陣営の選挙対策本部長を務め、岸田氏を首相の座へ導いた軍師です。選挙対策本部長は選挙の際は幹事長の手足となって、公認・推薦の調整や選挙情勢の分析などを取り仕切る要職です。

 ちなみに衆院解散(10月14日)以降、岸田氏と会ったのは麻生太郎副総裁と甘利明幹事長がともに10月15日と18日の2回ずつ。菅義偉元首相、二階俊博前幹事長、安倍晋三元首相はいずれもゼロ回です。「長老支配」が支持率上昇の足を引っ張っているとの報道が多い岸田氏ですが、世代交代を意識してか、党内実力者と少しずつ距離を置いている様子が浮かび上がります。

野党共闘も公明党の議席は増える見通し

 一方、野党は立憲民主党の枝野幸男代表がフル稼働中ですが、自民党に比べるとメディアに登場する政治家は少なく、役者がいない感もあります。立憲民主党は共産党、国民民主党、れいわ新撰組、社民党との野党共闘で非自民票を結集し、政権交代を訴えています。小選挙区の7割ほどで候補者を一本化し、50前後の小選挙区で自民党と野党共闘候補が伯仲しているとみられます。

 気勢の上がる野党陣営ですが、選挙巧者の公明党が2017年選挙で獲得した21議席を上回る見通しで、自民党と公明党の与党合計の過半数は揺るぎそうにありません。

 2017年の総選挙では、投票率は53.68%と過去最低だった2014年選挙に次ぐ低率にとどまりました。2017年は7月に野党の選挙協力が進まなかった上、超大型の台風21号が接近して都市部の「支持政党なし」層が大量に棄権したことが自民党圧勝の要因とされます。

 今回も最終的には、浮動票の獲得状況が与野党の勝敗に大きく影響しそうです。