米景気は「ほど良い湯加減」続く?
米景気が過熱すると、インフレ懸念が強まり長期金利が上昇して、米国株は下がります。米景気が失速すると、業績悪化懸念で米国株は下がります。米景気は「熱すぎず、寒すぎず」「ほど良い湯加減」であることが、米国株が上がるために必要と言われます。
米長期(10年)金利の動き:2020年1月2日~2021年10月15日
2021年3月に米景気過熱が懸念された時は、米長期金利が一時1.7%台に乗せ、それを嫌気して米国株が下がりました。ただし、その後、来年にかけて米景気は減速するとの見通しが広がり、米長期金利は低下、米国株は高値を更新しました。
ただし9月には、米景気が減速する見通しの中で、長期金利が上昇し、「悪い金利上昇」との不安が広がりました。
以下3つの要因が重なって、米長期金利が上昇しました。
【1】天然ガス市況の高騰を受けて、米インフレ長期化が警戒されたこと。
【2】米債務上限問題が長びくことで、米国債の不安が高まったこと。
【3】FRBが11月にテーパリング(金融緩和縮小)開始を示唆していること。
米債務上限問題【注】への不安は続いていますが、米議会がとりあえず12月3日まで上限を引き上げる法案を可決したので、米国債がデフォルトする問題は12月3日まで先送りされました。それを好感して米国株は反発しました。
【注】米国の債務上限問題
コロナ禍の財政出動で米国の財政赤字が拡大しています。米国債の発行上限を引き上げることを米国議会が承認しないと、米国債への利払いができなくなり、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥ります。ところが、与党「民主党」の政策に不満を持つ野党「共和党」がすんなり上限引上げを認めないために、デフォルトの不安が出ています。最終的に議会が債務上限拡大を認めるのはほぼ確実と考えられますが、民主党と共和党の政策闘争の材料となっているため、デフォルト不安はしばらく続く可能性があります。
米債務上限問題は、簡単に解決しないやっかいな問題ですが、最終的に上限が引き上げられることはほぼ確実と考えられており、最終的には重大な問題とはならないと市場では捉えられています。
インフレ懸念、債務上限問題、テーパリング不安から、米長期金利が上昇していることが不安材料とはなっていますが、先行き米景気の減速が見込まれていることもあり、すぐに金融が引き締めの方向に進むとは考えられていません。
9月の米ISM景況指数は、製造業・非製造業とも好調で、2018年(コロナ前の好調時)の水準を上回っています。始まったばかりの7-9月の米企業業績も好調です。米景気・企業業績が好調な中で、米長期金利の上昇は一定範囲に抑えられていることから、米国株の反発につながりました。