※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日本株「買い場」? 米景気「ほど良い湯加減」?
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米景気・企業業績好調を再確認、日米で株が上昇

 先週(10月11日~15日)の日経平均株価は1週間で1,019円上昇し、2万9,068円となりました。3つの要因が上昇に寄与しました。

【1】米国の景気・企業業績が好調であることを再確認、米国株が反発。
【2】米ドルが上昇(1ドル114円台まで円安が進んだこと)。
【3】緊急事態宣言が解除された日本で消費回復の期待が高まっていること。


 不安材料はまだいろいろ残っていますが、日本株は割安で長期的に買い場の見方を継続します。そう考える理由を説明します。まず、コロナショック前からの日経平均の動きをご覧ください。

日経平均週足:2020年1月6日~2021年10月15日

出所:楽天証券MSⅡより作成。2020年7月から景気回復期との判断は楽天証券経済研究所

 いつもご説明していることですが、株は景気循環を半年から1年先取りして動く傾向があります。コロナ前からの日経平均の動きを、景気循環に関連づけると、以下のように説明できます。

【1】2020年1~3月:不況下の株安。景気が悪いので株が下落
【2】2020年4~6月:不況下の株高。景気は悪いが、次の回復を織り込んで株は上昇
【3】2020年7月~2021年2月:好況下の株高。景気回復を好感して株は上昇
【4】2021年3~10月:スピード調整?次の景気後退を織り込む株安?

 今、日本株を買っていって良いか悪いか、判断を分けるのは、2021年3月以降の日経平均の下落の解釈です。私はスピード調整と考えているので「買い場」と判断しています。

 2022年にかけて日本および世界の景気回復が続くと考えていますが、2021年2月までの日経平均の上昇ピッチが速すぎたので、しばらくスピード調整が必要になっていると解釈しています。スピード調整で売られたところは、割安な日本株を買い増す好機と判断します。

 ただし、私とは異なる解釈をする人もいます。今の下落が単なるスピード調整ではなく「次の世界不況を織り込む下落の始まり」であるとの解釈です。2022年にかけて中国景気が悪化、米景気も失速、そのあおりを受けて日本の景気も悪化するという考え方です。

 2022年に景気悪化が待ち受けているとすると、それより半年―1年前から株が下げ始めることはよくあることです。2021年3月以降の日経平均の下落が、「次の不況を織り込む株安」と解釈するならば、下がったところで安易に日本株を買い増しするべきでないという解釈につながります。

中国不安続くが、米国の不安は低下

 2021年の日経平均の動きを、景気循環の視点から、より詳しく見てみましょう。

 日本の景気を決める3大要素は、米国景気・中国景気・国内景気です。GDP(国内総生産)ランキング世界トップの米国の影響が極めて大きいのは自明です。続いて、GDP世界2位の中国の影響が大きく、最後に日本の内需の影響を受けます。その3つで、日本の景気はほぼ決まります。

日経平均週足:2021年1月6日~2021年10月15日

【1】2021年3~8月:日本の不安で下落

 ワクチン普及の遅れで緊急事態宣言が解除できない日本の消費停滞が続く懸念、菅元首相のもとで自民党が衆院選に大敗する懸念から日本株が独歩安となりました。米景気過熱の不安、中国景気減速の不安もありましたが、この時点で米国株の最高値更新が続き、日本株の独歩安となっていたことを考えると、日本の要因が日経平均下落の主因だったと考えられます。

【2】2021年8月末~9月:日本の不安低下で急反発

 菅内閣退陣により、新しく選ばれる総裁のもとで自民党が衆院選を乗り切り、大型経済対策を発動する期待と、ワクチン普及が急速に進んだ効果による経済再開期待から日経平均は急反発しました。米国株が調整し始める中での日本株の独歩高でした。

【3】2021年9月27日~10月8日:中国・米国の不安から急落

 中国恒大が破綻する不安、米債務上限問題に対する不安などから、日経平均は急反落しました。

【4】2021年10月11~15日:米国の不安が緩和し反発

 米国景気・企業業績が好調であることを再確認、米景気が過熱する不安も低下し、米国株が反発。それを受けて、日経平均も反発。

米景気は「ほど良い湯加減」続く?

 米景気が過熱すると、インフレ懸念が強まり長期金利が上昇して、米国株は下がります。米景気が失速すると、業績悪化懸念で米国株は下がります。米景気は「熱すぎず、寒すぎず」「ほど良い湯加減」であることが、米国株が上がるために必要と言われます。

米長期(10年)金利の動き:2020年1月2日~2021年10月15日

出所:QUICKより作成

 2021年3月に米景気過熱が懸念された時は、米長期金利が一時1.7%台に乗せ、それを嫌気して米国株が下がりました。ただし、その後、来年にかけて米景気は減速するとの見通しが広がり、米長期金利は低下、米国株は高値を更新しました。

 ただし9月には、米景気が減速する見通しの中で、長期金利が上昇し、「悪い金利上昇」との不安が広がりました。

 以下3つの要因が重なって、米長期金利が上昇しました。

【1】天然ガス市況の高騰を受けて、米インフレ長期化が警戒されたこと。
【2】米債務上限問題が長びくことで、米国債の不安が高まったこと。
【3】FRBが11月にテーパリング(金融緩和縮小)開始を示唆していること。

 米債務上限問題【注】への不安は続いていますが、米議会がとりあえず12月3日まで上限を引き上げる法案を可決したので、米国債がデフォルトする問題は12月3日まで先送りされました。それを好感して米国株は反発しました。

【注】米国の債務上限問題
 コロナ禍の財政出動で米国の財政赤字が拡大しています。米国債の発行上限を引き上げることを米国議会が承認しないと、米国債への利払いができなくなり、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥ります。ところが、与党「民主党」の政策に不満を持つ野党「共和党」がすんなり上限引上げを認めないために、デフォルトの不安が出ています。最終的に議会が債務上限拡大を認めるのはほぼ確実と考えられますが、民主党と共和党の政策闘争の材料となっているため、デフォルト不安はしばらく続く可能性があります。

 米債務上限問題は、簡単に解決しないやっかいな問題ですが、最終的に上限が引き上げられることはほぼ確実と考えられており、最終的には重大な問題とはならないと市場では捉えられています。

 インフレ懸念、債務上限問題、テーパリング不安から、米長期金利が上昇していることが不安材料とはなっていますが、先行き米景気の減速が見込まれていることもあり、すぐに金融が引き締めの方向に進むとは考えられていません。

 9月の米ISM景況指数は、製造業・非製造業とも好調で、2018年(コロナ前の好調時)の水準を上回っています。始まったばかりの7-9月の米企業業績も好調です。米景気・企業業績が好調な中で、米長期金利の上昇は一定範囲に抑えられていることから、米国株の反発につながりました。

米ISM景況指数:2018年1月~2021年9月

出所:米ISM供給公社

中国の不安は長期化へ、国内消費の回復期待は高まる

 恒大の破綻リスクは高まっています。恒大以外の中国不動産大手にも財務面で問題を広がっています。ただし、中国の問題が世界の株式市場にすぐに大きなダメージを与えることはないと見られています。

 一方、国内消費の回復期待は高まっています。ワクチン接種率の上昇、経口治療薬の開発、感染減少、緊急事態宣言の全面解除を受けて、これから日本でも消費回復が顕著になると予想しています。

 岸田政権になってからの内閣支持率が、新政権発足直後にしては低めで、新政権への期待はやや低下しました。自民党政権であるにもかかわらず所得再分配を強調し、資本主義の構造改革や成長戦略への熱意が従来の自民党政権に比べてやや低いと見られていることにやや不安は出ています。

 それでもとりあえず、コロナ対策の経済政策はしっかりやってくる方針であることに対し、株式市場の期待は続いています。

割安な高配当利回り株「買い場」と判断

 三菱UFJ FG(8306)(予想配当利回り4.1%:株価657.1円:1株予想配当金27円)、三井物産(8031)(予想配当利回り3.5%:株価2,592.0円:1株予想配当金90円)、JT(2914)(予想配当利回り5.6%:株価2,323.0円:1株予想配当金130円)など、大型高配当利回り株から買っていくべきと考えています。

 なお、高配当利回りの投資参考銘柄ついて、6月15日に日経BPより出版された拙著「NISAで利回り5%を稼ぐ、高配当投資術」でさらに詳しく解説していますので、ご参照ください。私が25年の日本株ファンドマネージャー時代に得たバリュー(割安株)投資のノウハウを初心者にわかりやすく解説しています。

 NISA(少額投資非課税制度)を使って高配当利回り株に長期投資して資産形成を行っていくことを考えている個人投資家にぜひお読みいただきたい内容です。

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