今日の為替トレッキング

今日の一言

動いてさえいれば、逃げきれる

Wake Me Up When September Ends

「物価が上昇していることは認める。」でもその原因は流通網の混乱による供給ショックであって、ソビエト時代のモノ不足が起きているわけではない。流通網の修復と共に自然に解消されるはずだ。このようにFRB(米連邦準備制度理事会)は主張してきました。しかし、米国で起きているインフレは無視することはできないレベルまでエスカレートしています。米国産冷凍バラ肉の卸売価格が前年比8割高まで上昇するなど、日本もその影響が及んでいます。

 パウエルFRB議長も、ようやく、今の状況が想定以上に長く続く可能性があることを認めました。それでもなお、本音では「一過性で終わる」と考えているようです。

 コアPCE(個人消費支出)インフレ率が前回2%を超えたのは2018年ですが、その時は数カ月しか続かなかった。その前は2007年までさかのぼり、3年以上続いたのは2004年~2006年を最後に一度もない。FRBが緩和縮小を急ぐ本当の理由は、インフレ率が低下する前に終わらせたいからだ、という見方もあります。

 もっともFRBがどう考えていようが、マーケットにとっては関係ないこと。FRBが間違っていた場合と本当に正しかった場合の、どちらのリスクを取るべきかで迷っているだけです。インフレ上昇を示すデータに対してFRBが「一過性」というコメントで対応するほど、状況はかえって悪化するだけ。緩和縮小への道を進み始めたFRBが今更「ハト派」に逆戻りすることはできないし、開始時期を引き延ばすほど、負のインパクトは大きくなるのです。

「テーパー・タントラム」とは、8年前の2013年5月に、当時のFRB議長のバーナンキ氏が量的緩和の縮小(テーパリング)を示唆したことが引き金となって巻き起こった国際金融市場の大波乱のことです。

 今回、FRBが緩和縮小を宣言しても「テーパー・タントラム」は起きないと市場関係者の多くは安心していました。しかし、いくらわかっていても冷静に振る舞うことは難しい。この米長期金利の急上昇を目の前にしているとテーパー・タントラムはやっぱり起きたのだと思ってしまいます。