今日の為替トレッキング

今日の一言

困難な時期というものは永遠に存続しない。だが困った人々というのは常に存在する

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 米国の債務上限の期限が迫っています。

 バイデン民主党は総額3.5兆ドルのインフラ投資法案に債務上限引き上げを盛り込み、共和党の支持なくして独自に成立させようと目論んでいました。これに対して共和党は猛烈に反発し、上院において法案審議を阻止する議事妨害を行使。法案審議を進めるには60票の賛成が必要でしたが投票結果は賛成48に終わりました。

 そのため民主党は法案から債務上限に関する規定を削除し、つなぎ予算(funding bill)のみの成立を目指しましたが27日の投票では共和党の反対で必要な票数に達せず、法案は事実上否決。つなぎ予算は9月末つまり明日までに成立しなければ政府機関が閉鎖されてしまうので、民主党は早急な対応を迫られています。政府機関閉鎖を許した与党は過去の例からも支持率急落の憂き目にあっているので来年の中間選挙をにらんで民主党は神経質になっています。

 バイデン大統領は今年4月、「米国における一世代に一度の投資」と銘打って大インフラ投資計画を発表しました。1950年代の州間高速道路システムの建設以来、過去70年間で最大規模の計画です。

 バイデン大統領のインフラ投資計画は橋や道路の建設といった「オールド・エコノミー」だけではなく水道管交換や高速ブロードバンドなどの整備や人工知能(AI)など研究開発投資に防衛関連以外としては過去最大の投資金額を見込んでいます。

 バイデン大統領は「インフラ計画は中国との競争で不可欠」であると強調。インフラ計画には中国からの部品供給の依存度を下げるために半導体のサプライチェーン(供給網)強化も盛り込まれています。バイデン政権が中国との対立姿勢を明確にしたことは地政学的にも重要です。両国の緊張関係はトランプ前大統領時代よりも高まったとも考えられます。

この1兆ドル規模のインフラ投資法案については、30日に米下院で採決を行う予定。(上院では8月10日に「超党派」で可決。)ただ社会福祉や気候変動などに対応した3.5兆ドル規模の歳出法案については下院は審議入りの日程をまだ決めていません。

 過去70年間で最大規模となるインフレ投資計画は米国の景気回復をさらに後押しするとの期待がありますが支出は約8年間に渡って行われるため、(現金給付のような)即効的な成長効果は期待できないようです。

 バイデン・インフラ投資計画には財源をどうするのかという大問題があります。1.9兆ドルの追加経済対策については 速やかな経済成長を促すことによって財政赤字は減らすことは可能という考えのもとイエレン財務長官は米国債発行で賄う考えです。

 しかしさすがにインフラ投資計画については米債発行だけでは足りず増税は避けて通れない。インフラ投資は資産の再配分であって景気刺激策としての即効性はないと指摘される理由です。ただ超党派の上院議員グループとの合意には法人税増税は盛り込まれていません。

 バイデン・インフラ投資計画に対するマーケットの関心はいまひとつのようです。景気刺激策のような即効性がないせいかもしれません。しかし金額の巨大さを考えるなら米10年債利回りとドルの方向に少なからぬインパクトを与えることになるでしょう。