考えられる最悪シナリオと、最善シナリオ
現時点で考えられる最悪シナリオと最善シナリオをまず作ってみました。
最悪シナリオ:リーマン・ショック並みの問題に発展
- 中国政府は恒大集団を救済せず、破綻させる
- 中国国内で建設会社や銀行に連鎖破綻が広がる
- ドル建て債務不履行で、グローバル金融市場でも損失拡大
- 中国景気悪化。米景気も失速
- 中国で不動産価格が暴落
- 恒大破綻は序章。中国の大手不動産、銀行が次々と破綻
- 中国への投資額が大きい欧米金融機関にも巨額損失が発生
最善シナリオ
- 中国政府が恒大集団を公的資金で救済
- 恒大に債権を有する建設会社や金融機関に、ほとんど損失は発生しない
- ドル建て債務は履行される
- 中国景気・米景気とも減速するが、ゆるやかな景気拡大続く
- 中国の不動産全般の下落は起こらない
- 恒大以外の不動産大手に信用不安は連鎖しない
- 中国への投資額が大きい欧米金融機関に損失は発生しない
中国政府が恒大を救済するか否かによって、大きく命運が分かれます。中国は、経常収支の黒字を稼ぎ続けてきた「金持ち国」で、財政的な余力は十分にあります。救済することができないわけではありません。
ただし、中国政府も、なんの根拠もなく恒大を救済するわけにはいきません。メチャクチャな経営をしても中国政府が助けるという悪しき前例となると、モラルハザードが広がりかねないからです。
不動産開発業が、中国政府が投資拡大をはかっている分野でないことも、救済をためらわせる要因になっていると思います。
かつて中国政府は、不動産開発や石炭資源開発、粗鋼生産力の拡大に向けた投資拡大を国策としていました。ただし、今はそうではありません。不動産・資源・鉄鋼への国有企業による無謀な投資拡大が不良資産の拡大につながった、苦い経験があるからです。
今は、半導体や電気自動車などハイテク分野の投資拡大を進め、中国製造業の競争力強化をはかっているところです。それが、不動産大手に巨額の公的資金を入れることをためらわせる要因となっています。
ただし、だからと言って、恒大を破綻させるわけにはいかないはずです。中国国内・海外への負の連鎖拡大が非常に大きくなる可能性があるからです。
中国国内外へのダメージが過度に大きくならず、かつモラルハザードを生じないような救済方法を、今、中国政府は考えているところではないでしょうか。