運用で有効な「小さな賭け」とは

 マーケットの世界では、同じパターンが継続的に有効であることは稀だ。有効性が変化する。従って、時間軸に沿って同じパターンのトレードを細かく何度も繰り返すような戦略には今一つ魅力がない。

 理想をいうなら、逆相関とまでいわないまでも、お互いになるべく独立で有利な賭けを小さな単位で、多数、同時にポートフォリオに取り込むような分散投資だ。これが可能なら、勝率も上がるし、時間の効率もいい。

 しかし、それぞれ独立な事情で「有利」と判断できる投資対象を多数見つけるには、ハードワークが必要だ。

 残念ながら、楽をして儲ける方法はないし、苦労したから必ず報われるというほどマーケットはお人好しにできていない。難しいものだ。

【コメント】

 2012年公開だから、9年前の記事だが、読み返して考えるところが幾つかあった。読者にも、是非、読んで貰いたい文章だ。

 先ず、ビジネスや人生においては、「小さく賭ける」ことは、「周到な準備が出来たと思ってから大きく賭ける」よりも有効である場合が多い。「最大の損失は幾らか?」を自問しながら、ともかく始めてみることによって、新たな情報と経験に触れて物事が進む場合が多いからだ。これは、改めて心に留めておきたい。

 本文にあるように、「投資」の場合は少々複雑だ。「小さな賭け」は、(1)時間の方向に関しては概して有効ではなく、(2)空間(ポートフォリオ)に関しては間違いなく有効だ、というのが結論なのだが、正しく理解している投資家は少ないように思う。(2021年9月3日 山崎元)