投資家心理の逆張り!わずか2年で5億円が8億円に!

 高い利回りを求める世界中の投資家は、欧米の大手金融機関が発行する劣後債などを活発に取引していました。

 劣後債は一見すると普通の社債とさほど変わりなく見えますが、発行する金融機関側から見ると、資本に近い位置付けです。欧州債務危機で金融機関の安定性が不安視されたり株価が大きく下がったりする局面では、これら劣後債も大きく値を下げていました。その中でも、償還期限のない永久劣後債はより資本に近く、特に値を下げていました。

 しかし、永久劣後債といっても、繰上償還予定日が設定されており、繰上償還がされるのであれば、価格は償還予定日に向けて額面金額に収斂(しゅうれん)していきます。また、発行する金融機関が破綻しない限りは、債券としての性質上適正な利回り水準、つまり平常時の価格に戻ることが期待できます。ここが絶対評価の株式と根本的な違いです。

 そこでF氏は、英国のBarclays銀行が発行する永久劣後債に注目しました。
 Barclays銀行とは、英国の四大銀行の一つに数えられる大手民間銀行。そもそもの創立は17世紀後半にさかのぼる、トラディショナルな銀行です。F氏は、Barclaysという巨大な金融機関が実際に破綻する可能性と、その際に失うであろう金額、そうでなければ期待できるリターンと、今の危機状況が収束していくまでの時間を総合的に考え、500万ドル相当もの大きな投資に躊躇なく踏み切りました。

  購入した当時、2011年ごろの単価は約60ユーロ台。そして、先ほど述べたように欧州の債務危機が収束したのは2013年ごろ。債券の価格は2014年には90ユーロ台へ回復。ユーロ/円も、1ユーロ=100円台から140円台へ大幅高となったこともあり、F氏は保有期間約2年強で、5億円の攻め資金を8億円にまで増やし、大きな投資成果を上げたのです。

 富裕層の運用商品として、今や劣後債などの債券はポピュラーなものになっていますが、金融機関の株価が大きく下がるような局面では、債券であっても大きく値を下げることがあります。投資を検討する際には、発行体の見極めや早期償還条項の内容をよく吟味する必要はありますが、投資の好機だと思っていても株式に投資をするには躊躇してしまう場合に、注目してみても良いかもしれません。