相場はどう動く

 明るいグレーは目下のメイン・シナリオと、筆者は考えています。6月以降調整気味の景気・バリュー系株式が、8月初めに公表の強い雇用統計以降に復調している流れの延長線上にあります。良好な景況はやがてグロース銘柄の再浮揚にもつながるでしょう。

 ただし、10-12月期にGDPのデフレ・ギャップ解消と雇用加速が相伴えば、FRBが金融緩和解除ステップの検討を進めると見込まれます。株式相場はそこに至るまでの上昇の程度に応じて、反落リスクを被る恐れがあります。

 しかし、株式相場の動揺、世界経済に残る不確実性を踏まえ、FRBはテーパリング開始を決めても、金融政策は依然として緩和気味であると強調し続けます。米政府も2022年の中間選挙に向けて、景況・市況のサポートに余念がないでしょう。既にテーパリングを織り込む米株式市場の調整反落は限定的で、2022年へ業績相場としての堅調地合いを保つと判断します。

 暗いグレーの場合、米国など先進国が景気後退に陥るような悲観シナリオの可能性は、現時点で相対的に小さいと考えます。ワクチン接種は進み、中国も低インフレ環境で政策対応余地があります。景気先行き懸念で米株式市場が動揺するなら、FRBはより慎重にハト派政策を維持することになり、金融相場の余勢を期待できます。

 景気シナリオがグレー明暗どちら寄りかの分岐で、株式相場の道筋に相違はあります。しかし、明暗どちらに転んでも勝機があるとの想定です。もちろん、より白さが増して、金融引き締めの前倒し観測で相場の大幅反落とか、より黒さが増して、景気回復期待の頓挫で株安というケースも、可能性として排除はされません。それでも、グレーの明暗は時間の経過とともに探っていくしかなく、現時点で極端な楽観、悲観の明暗を定めることは、投資家にとって適切な視座にはならないというのが、筆者の見立てです。

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