8月16日には、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数(図3)が7月実績43.0、事前予想28.5に対して18.3とさらに大幅に低下。そもそも7月43.0が異常高で、市場も28.5への揺り戻しを見込んでいましたが、それ以上の悪化を受け、やはりデルタ株原因説が報じられています。

図3:米製造業景況指数 NY連銀とNAPM(全米購買部協会)

出所:Bloomberg、田中泰輔リサーチ

 2020年のコロナ禍以降、特に2021年4-6月期以降に確認される経済指標は、とっぴな振れをいちいち気にして精査したところで得られる含意は乏しいと、ご案内してきました。

 特に米指標は、2020年3~5月指標の劇的悪化、6月以降の急反発を経て、2021年にはワクチン接種の進捗(しんちょく)と2月決定のとっぴな財政政策で全般に上振れる一方、さまざまな経済領域での需給ミスマッチで回復の道のりがデコボコです。ほとんどの経済指標になされる季節調整処理もゆがんでいる恐れがあります。前年同月比、前月比など指標の変化がとっぴに脈絡なく振れることは、事前に想定されたこととして、注意喚起してきた次第です。8月17日公表の7月の米小売売上(図4)の前月比、前年同月比を見ると、通常大きくは変わらない消費行動がコロナ禍でとっぴに振らされた後の着地点の模索過程が窺(うかが)われます。

図4:米小売売上 前月比と前年同月比

出所:Bloomberg