3.2022年6月期会社予想受注高は前年比41.7%増の1,600億円

 会社側は、2022年6月期の全社受注高を1,600億円(前年比41.7%増)と予想しています。このうち半導体関連装置受注高は1,450億円(同40.0%増)です。

 この受注予想の中には、単価の高い「A150」だけでなく、ディープUV光を使い7ナノ、5ナノでEUV露光装置用フォトマスク欠陥検査装置の主力として使われていた「MATRICS X8ULTRA」、それ以前の微細化世代向けに使われる「MATRICS X812Hit」のような1世代以上前のフォトマスク欠陥検査装置の受注予想が入っており、「MATRICS X8ULTRA」、「MATRICS X812Hit」の引き合いと受注が会社側の想定以上に多くなっている模様です。

 会社側は納期を明らかにしていませんが、今期以上に来期2023年6月期の納入が多くなると思われます。会社側によれば、半導体業界を取り巻く半導体不足や地政学的リスクによって、半導体設備投資が弱まる兆候は見られないということです。

 また、新製品として2021年6月にマスクエッジ検査装置「MZ100」を発売しました。EUV露光装置用フォトマスクでは、表面と裏面の検査だけでなく、エッジ(縁)部分の検査が必要になっているためです。顧客はフォトマスクメーカーを想定している模様です。

グラフ2 レーザーテックの全社受注高

単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

表4 レーザーテックの品目別受注高

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

表5 レーザーテックの受注高、受注残高内訳:通期ベース

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

4.楽天証券の2022年6月期、2023年6月期業績予想を下方修正するが、2023年6月期から高率の利益成長を予想

 2022年6月期会社予想、売上高830億円(前年比18.2%増)、営業利益270億円(同3.6%増)と前述の前提を参考に、楽天証券の2022年6月期、2023年6月期業績予想を下方修正します。2022年6月期は前回楽天証券予想の売上高880億円、営業利益310億円を、売上高880億円(同25.3%増)、営業利益290億円(同11.2%増)に小幅下方修正します。2023年6月期は前回の売上高1,260億円、営業利益510億円を、売上高1,260億円(同43.2%増)、営業利益460億円(同58.6%増)に、これも小幅下方修正します。

 売上高予想を下方修正せずに、営業利益予想を小幅下方修正した理由は、起点となる2021年6月期の業績水準がもともとの楽天証券予想よりも高かったこと(前述のように前倒しの収益計上があったため)、受注残の大きさ(2022年6月末会社予想2,128億円)より、今後高率の売上成長が期待できることによります。

 また、今期2022年6月期は楽天証券では会社予想を上回る業績を予想していますが、大手半導体メーカーの設備投資が活発なため、今期も前倒しで収益計上する案件があると予想したためです。

 2024年6月期は、新たに売上高1,800億円(同42.9%増)、営業利益720億円(同56.5%増)と予想します。

5.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の2万5,000円を維持する

 今後6~12カ月間の目標株価は、前回の2万5,000円を維持します。

 楽天証券の2023年6月期予想EPS 395.9円に、想定PEGを1倍強、2023年6月期楽天証券予想営業増益率58.6%より想定PER60~70倍を当てはめました。会社側は2023年6月期に採算が回復するとしていますが、これが難しくなるかもしれない業績リスクもあると思われます。しかし一方で、今期の会社予想受注高1,600億円の大きさを高い成長性の証として重視しました。

 目先の業績変化率鈍化が株価の重荷になると思われるため、株価上昇には時間がかかる可能性もありますが、引き続き中長期で投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄:レーザーテック(6920)