個別決算にはもう意味がないの?

 このように、以前は「決算短信」にも『会社四季報』にも載っていた個別決算ですが、私たち個人投資家が株式投資をする上で全く意味がなくなったのかといえば、決してそんなことはありません。

 個別決算が大きな意味を成すのは、配当金や自己株式の取得といった、株主還元に関する事項においてです。

 皆さんは、上場企業が配当金を出したり、自己株式を取得することができる条件は知っていますか。

 それは「個別決算」における貸借対照表で、利益剰余金が存在することが条件なのです(厳密には非常に細かい算式で分配可能限度額を計算しますが、難しすぎるため、「利益剰余金=分配可能額」と置き換えてしまっても構いません)。

 例えば『会社四季報』を見ると、利益剰余金の金額が掲載されています。実はこの数値、「連結ベース」での利益剰余金なのです。

 企業によっては、連結ベースでは潤沢な利益剰余金があったとしても、個別ベースでは利益剰余金がマイナス(=「欠損金」)となっているケースもあるのです。

 連結ベースでは、パッと見で配当金を出せる余力があるように見えても、個別ベースで欠損金が生じているので、配当金を出すことができません。自己株式の取得についても同様に、個別ベースで欠損金がある場合はできないことになっています。

 配当金の金額や自己株式の取得の有無は、株価形成の上で大きな影響を与えます。配当金を出せない、もしくは自己株式が取得できない企業は、そうでない企業より株価の上値が重くなる可能性があることは、ぜひ理解しておきましょう。

個別決算を見るにはどうすればいい?

「決算短信」にも載っていない、『会社四季報』にも載っていない個別決算…では何を見れば内容を知ることができるのでしょうか。

 実は、年に1回作成される「有価証券報告書」であれば、連結決算とともに個別決算についても見ることができます(四半期ごとに作成される四半期報告書には、個別決算は掲載されていません)。

 有価証券報告書は、企業のウェブサイトなどで確認できますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 個別決算なんて意識したこともなかった…という方は、連結決算重視の今でも、個別決算にも意味があるのだという点を、ぜひ知っておいてくださいね。